- 2008年12月19日 09:51
- News
RNAi を直接の治療目的とするんじゃなくって、いわゆるがんの悪性度=予後の判断に利用しようとする試みが始まっている。
逆に言えば、卵巣がんの場合は、RNAi の機構が"がん抑制遺伝子(因子)"として機能しているという事の証明にもなっているのだが、、、、ほとんどの場合、RNAi は特定の遺伝子発現の抑制って事なんだけど、この一次的な作用だけで RNAi の機能を評価しようとすると、マズイことになる・・・・。一次的に抑制された遺伝子の発現によって、逆に、発現が増強する遺伝子もあるからだ。
これは、RNAi を治療目的に利用することの難しさを物語っている。(ってゆーか、遺伝子の機能を単純にカスケード的な系と考えちゃいけない。ネットワーク的なんだよね)
個の医療の実践が、薬物分解酵素の多型の判定から始まったのと同様、RNAi の臨床応用は、状態の判定=検査目的から始まるのかもしれない。
ちなみに、Drosha は、DNAから転写された m-RNA のように"長い"RNA(primary miRNA)を適当な長さの pre-miRNA に切断する酵素である。"長い"一本鎖のRNAはところどころで、自分自身の中で相補的にくっ付きあってループ構造をとるのだが、それを一つの単位として切り離すのが、Drosha の役目。詳しくは、Pasha/DGCR8 と複合体となって働く。Dicer はそれをさらに細かく(21塩基ほど)切断する。
ただし、ここまでの miRNA は2本鎖として存在している。これを一本鎖化する酵素は、まだ、発見されていない。
Dicer, Drosha, and Outcomes in Patients with Ovarian Cancer
W.M. Merritt and others
背 景
卵巣癌において、RNA 干渉機構の構成要素である Dicer と Drosha の検討を行った。
方 法
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を用いて、111 例の患者から採取した浸潤性上皮性卵巣癌組織中の Dicer と Drosha のメッセンジャー RNA(mRNA)レベルを測定し、その結果を臨床転帰と比較した。卵巣癌、乳癌、肺癌の患者コホートの既存のマイクロアレイデータを用いて検証した。卵巣癌のサブグループを対象に、Dicer 遺伝子、Drosha 遺伝子のゲノム DNA の変異解析を行った。低分子干渉 RNA(small interfering RNA:siRNA)と短鎖ヘアピン RNA(short hairpin RNA:shRNA)を in vitro で導入することにより、Dicer に関する機能解析を行った。
結 果
Dicer と Drosha の mRNA レベルは対応する蛋白の発現量と相関を示し、Dicer は卵巣癌組織の 60%、Drosha は 51%で低下していた。Dicer の発現低下は腫瘍の病期の進行と有意に関連しており(P=0.007)、Drosha の発現低下は腫瘍減量手術が suboptimal(残存腫瘍径>1 cm)となることと有意に関連していた(P=0.02)。癌組織における Dicer と Drosha の発現がともに高い場合は、生存期間中央値の延長と関連していた(>11 年、これに対しほかのサブグループでは 2.66 年、P<0.001)。多変量解析により、疾患特異的生存率の低下に関する次の 3 つの独立した予測因子が明らかになった;Dicer の発現低下(ハザード比 2.10、P=0.02)、高悪性度の組織学的所見(ハザード比 2.46、P=0.03)、化学療法に対する反応不良(ハザード比 3.95、P<0.001)。Dicer の発現が低下した患者における臨床転帰不良は、ほかの患者コホートでも確認された。Dicer 遺伝子と Drosha 遺伝子でミスセンス変異が認められることはまれであったが、それらの有無は発現量とは相関していなかった。機能解析から、Dicer の発現が低下した細胞では、siRNA ではなく shRNA による遺伝子サイレンシングに異常がある可能性があることが示された。
結 論
この研究の結果から、卵巣癌細胞における Dicer と Drosha の mRNA レベルは、卵巣癌患者の転帰と関連していることが示された。
(N Engl J Med 2008; 359 : 2641 - 50 : Original Article)
(C)2008 Massachusetts Medical Society.
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