インセプション レオナルド・ディカプリオ 渡辺謙
昨日の日曜日、映画『インセプション』を観てきた。先週は『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』を観て、大変、がっかりしたので、今回は、その分、期待は大きかった。
『踊る大捜査線3』が面白くなかった理由は、、、、
私的には、ドタバタのお笑い漫才のような展開が、全体の印象やキャラクターのセリフを“軽薄”にしてしまっていると感じた。本店対支店、警官対官僚の構図にしても、本店や官僚の言動にその都度“キレる”シーンがあり、“抑圧”された感情が“鬱積”しない。その為、後で効いてくるはずの言葉が白けきっている。“感情移入”できない。なんでこんなセリフ?って感じちゃうのだ。
この辺の作りは、ちと古いが、イヴ・モンタン主演『恐怖の報酬』を見習ってもらいたいものである。映画はテレビドラマじゃないんだから、コマーシャルの間にチャンネルを変えられちゃうなんて考える必要は無い。一本の小説のようなものなんだから、前半に“バネを縮める”ようなシーンが続いても、最後に、、、、、となればいいのである。
さて、『インセプション』、期待通りの面白さだった。さすが、『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督って。
私の場合、主人公ドム・コブをサポートする女子大生アリアドネ、、、、このアリアドネって名前に、ストーリーを予感させるものがあったので、、、、なんか、先読みしつつ観ていたのだが、、、、、
アリアドネ、、、ギリシャ神話を知っている人には、すぐに思い出される。ミノタウロスの迷宮(ラビュリントス)、この迷宮から英雄テセウスが脱出する“知恵”を授けるクレタの王女、それがアリアドネだ。
クレタの王ミノスは、王子がアテネ軍に殺された報復として、アテネに“九年ごとに七人の少女と七人の少年をミノタウロスの生贄として差し出すこと”を要求していた。テセウスはアテネの王子でありながら志願して、この七人の一人としてクレタ島にやってきたのだ。
このテセウス、ギリシャ神話の英雄の常だが、とびきりの美男子。。。。ミノス王の王女は、チラっと見た瞬間、処女の体に衝撃が走り、恋に落ちる。
化け物ミノタウロスは、ミノス王がポセイドンとの約束を守らなかった(ミノス王はちとセコイ)報いに后に呪いをかけられ、后と牛が交わって生まれた仔だ。后は呪いにより白い雄牛に性的な欲望を抱かされる。宮廷のお抱え技師ダイダロスに命じて雌牛の模型を作らせた彼女は、自ら模型の中へと入り雄牛の身近へと訪れた。結果、后はミノタウロスを産むこととなった。
このダイダロス、成長するにつれ凶暴さが増したミノタウロスを閉じ込めておく迷宮の製作を、ミノス王により依頼されることになる。
テセウスに一目ぼれしたアリアドネは、生贄にされるテセウスを見殺しにすることが出来ず、迷宮の設計者であるダイダロスに相談し、、、、、となるわけだ。
「この糸玉を解きながら迷宮を進み、戻るときには糸を辿って・・・・」とテセウスに恋心とともに告げるアリアドネ。テセウスは、この時、どんな心境だったのか?
単なる生贄のハズだったアテネの若造にミノタウロスを殺され、迷宮まで破られ脱出されてしまつたミノス王は、、、「こんな知恵が我が娘にあろうはずはない・・・・。これは、、、、、誰かの入れ知恵・・・」ダイダロスに白羽の矢が立てられ、息子のイカロスとともに、迷宮に閉じ込める。
ダイダロスは迷宮の設計者でもあり、クレタ随一の頭脳の持ち主だ。息子とともに“翼”を身につけ、迷宮をまんまと脱出。しかし、親の賢い遺伝子を受け継がなかったイカロスは、喜びのあまり、父ダイダロスの言いつけを守らず、天高く舞い上がり、太陽の熱で翼が体から剥がれ、墜落死。(ちなみに、ダイダロスの名前は、クリント・イーストウッド主演監督「スペースカーウボーイ」のチーム名に使われている。この時も、「大事なものを落とすのかな?」って感じたっけ)
一方、恋の告白は、愛の駆け引きも、、、、「あなたを助けたら、私は、この国にはおれません。私をアテネに連れてって」とか。
アリアドネは、迷宮に迷い込んだ英雄を脱出させる手助けをする役割・・・・・映画の中のこの女の子の名前は、その役割の暗示なのか?その後もあるのか?
映画『インセプション』で、主人公ドム・コブが恩師マイルス教授からアリアドネを紹介されるシーンで、『アリアドネ、こちらに。コブ、紹介しよう、、、、、』と、その女学生の名前が明かされ、、、、、
この瞬間、以上のようなことが私の脳内を駆け巡ったのだった。
ギリシャ神話では、アリアドネとテセウスはこのあとアテネに帰るはずだったのだが、途中で寄り道をする。ナクソス島だ。その島の主人ディオニソス(英名バッカス:酒神)が、これまた、アリアドネに邪な感情を抱き、テセウスから寝取ってしまう。
テセウスは、もともと、恩があったから連れて来てたような?女だったので、コレ幸い?とアリアドネを島に置き去りにして、アテネに帰ってしまうのだ。なんと薄情な!
日本の誇るギリシャ神話の研究者、呉茂一教授は、、ホメロスの『オデュッセイア』においては(巻11、324-5)、一行がディアー島(ディーア島)に至ったとき、ディオニソスの了承のもと、アリアドネはアルテミスに射られて死んだとされるとしているけど、こういうオルタナティブの話の方が面白い。。。。おっと、脱線。
因果応報、、、、アテネの王子であり英雄テセウスが故国を出発するとき、父王アイゲウスに、『無事、クレタ島から脱出したときは船に白い帆を掲げて帰還する』と告げていた、、、、テセウスはこれをすっかり忘れてしまって、出航時の黒い帆のまま帰還したのだ。
これを見た父王アイゲウスはテセウスが死んだものと思いこみ、海に身を投げてしまった。アイゲウスが身を投げた海はその名にちなみ、エーゲ海と名づけられた。。。。。
あぁ~あ、女の扱いを間違えると、これだよ。現代でも十分通用する寓意・・・・・だよねぇ!?
でも、テセウスは、ギリシャ神話のいたるところで顔を出し、英雄中の英雄といってもよいし、ディオニソスはオリンポス12神にも加えられることがある重要な神だから、英雄に弄ばれたり?したけど、最後には神の后になったアリアドネもまんざらではなかったのかもしれないけど。
さて、ここまで読んでしまったあなた!
実は、このエントリーは、あなたの脳にインセプションすることが目的でした。
アリアドネって名前のイメージを。。。。
なんちゃって。
このようなアリアドネのエピソード、、、日本人には馴染みはない(観終わって妻に聞いたけど、妻は知らなかった。アリアドネって名前から思い出すことは無いって)けれど、欧米人には“忠臣蔵”並みのお馴染みのことだと思う。。。。って事は、これを知ることで、より、欧米人のごとき映画のインプレッションが・・・・・・・って事で、ご容赦!!