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エロスとプシュケ

ギリシャ神話の創世記では、カオス(混沌)とタルタロス(地獄)が生まれた時を同じくしてエロスが生まれている。現代風に言えば"チョーイケメン"な男神なのだが、神々の、そして人々の繁栄の為に"愛(性欲)"を生じさせる事は絶対必要なので、こんな生まれ方をしている。

しかし、洋の東西南北を問わず"神話"にありがちな話で、出自は時とともに変化しアフロディーテの子供と言う事でコンセンサスが得られているようだ。

エロスは神々の中の王であるゼウスですら女がらみでは恐れおののき、アポロンでさえ痛い目にあわせられる(オリンピックの時期だから思い出すけど、ダフネとのエピソードはエロスをからかった報いだもんね)ほど、その力は絶大なのだがアフロディーテだけには頭が上がらないらしい。どんな事でも頼まれたら嫌とは言えないのだ。


20080820_Psyche.jpgエロスの妻になる前のプシュケは、人間だったのだが神々を超えると言われるほどの美しさを有していた。人々はその姿に神々しいものを感じ、自然とひれ伏すほどだった。

そんな事を見せ付けられてアフロディーテが面白いわけがない。愛と美の女神の面目躍如。やがて意地の悪い仕打ちを考えつくのだが、それは、この世で一番醜い男に一生恋焦がれさせるというものだった。(ちなみにギリシャの神様たちには善悪の判断はない)

その仕事はエロスにまかされた。エロスの持つ銀の矢にいられた者は、恋の狂気に捉えられるのだが、エロス自身がついプシュケの美しさにみとれ、自分の矢で自身を傷つけたからさぁ大変・・・・と、それからのエピソードはネットに詳しいのでそちらで探していただくとして、このエロス、英語名"キューピッド"にしてしまうと、どうもイメージに合わない。ギリシャ名とローマ名でこれほどギャップのある神様も珍しい。


さて、ご存知の方もいらっしゃるだろうが、出雲大社。平成の大遷宮ということで60年に一度のチャンスに際し、私が向かったのが8月2日土曜日の夜。午前中の仕事を終わらせて、午後5時過ぎの羽田発-出雲空港行きの JAL に乗り込んだのだった。

下調べもそこそこだった事が禍して、結局、本殿には入れずじまいの大失態を演じてしまったわけだが(妻はかなり消沈していた)、私は、なにやら神様の雰囲気に触れられて、意外に嬉しかったりしていた。

そして、神様と人間の関係(葬式仏教の仏様との関係じゃない)って、何だろう?って考えていたんだけど、そんなタイミングで吉田敦彦氏の『ギリシャ・ローマの神話』を再読していたら、前回は記憶に残らなかった所が、今回は、非常に気になって、それがエロスとプシュケのエピソードだったのだ。

プシュケは『ψυχη(Psyche)』と書き、古代ギリシャ語で『魂』を表し、英語のサイコ psycho- , psychology の語源だ。

吉田氏によると『・・・オルペウス教や、その影響を受けたプラトンなどの教えによれば、人間の魂は、もとは神様たちといっしょに、天上で暮らしていたものなのです。しかし自分のした失敗のために、魂は神々の世界から地上に落ち、肉体の牢獄に閉じ込められることになったのです。だから、地上にいるあいだも、むかし神様といっしょに天上にいて味わった幸福を決して忘れずに、失敗を償う努力を怠らず続ければ、魂は、死後には牢獄から開放されて、また、神々のもとへ帰ることが出来るのです・・・』

プシュケはエロスの言い付けを守らなかったばっかりに、(アフロディーテに)酷い目にあわされるのだが、健気にも(エロスの力を恐れた他の神々が影に力になりながら)努力し、また、失敗し、努力し、好奇心に負けてまた失敗し、、と(かなり父性本能をくすぐられ、しかも絶世の美女ときているから、チョー気になる存在なのだけど)、最後にはエロスの正妻に迎えられ、、、と、非常にわかりやすい。

神話の世界の神様と人間の関係ってのは、小難しい"宗教"などの概念を持ち出さなくても解るものだし、これが、基本的な神様と人間の関係なんじゃないのかなぁ!?って思った次第だ。

比較的現代に近い時点でギリシャ神話に加えられた、いわゆる"ギリシャ悲劇"では、かなり人間の精神構造の理解がすすんだと見られ、単純な"神様と人間の関係"というよりは、かなり高度な心理的作用をも期待するようなものになってきている。

ギリシャ神話がより高度な精神面へのアプローチである"ギリシャ悲劇"を飲み込もうとしているすぐお隣では一神教が目覚めようとしているのだが、人間、考えすぎると"一神教"になるのかもしれない。


私は、生まれて初めて島根県を訪れたのだが、自分の中で宗教という言葉の持つイメージと神様が分離し始めたのに気づいた。

そして、日本人には多神教が似合っていて、苦しい時に神頼みし、困った時にすがりつき、病気になって求める救いは、エロスとプシュケのような簡単なものがいいんじゃないのかなぁと・・・・。

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2008年08月20日 09:56に投稿されたエントリーのページです。

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