前回のエントリーでは、一般紙やテレビニュースで医療関連の情報は「100害あって一利なし」と言い切った。ちょうどイイ例があるので、ネタにする。
下に引用する共同通信社の記事中の文章、「CS-8958は新型インフルエンザや鳥インフルエンザへの効果も期待できるという。」というのが、それだ。
CS-8958は、シアル酸アナログだから、新型インフルエンザや鳥インフルエンザへの効果も期待できるのは当たり前。特異性なんて、ほとんど無い。っていうか、特異性があったら、ヒトの側のシアル酸に多型が存在するってことになっちゃうし。で、さらに、この表現じゃ、タミフルやリレンザが効かないというような意味に取れるが、ハッキリ言って、ほとんど差は無い。
そもそも、効果があるとかないとか言う表現が、全く非科学的。
そもそも、インフルエンザはほぼ5~7日で自然治癒する疾患(一部の体質のヒトを除いて。この体質は不明。いわゆる虚弱体質とは関係なし)だし、新型というのは、ヒトに感染できるタイプのウイルス遺伝子を、人類が細かく分類できるようになってから、初めて“遭遇する”ってだけの事で、新型だから強毒性というわけじゃない。強毒性化は、従来のウイルスでも同等に変異の頻度をもっている。
そもそも、鳥のH5は特別な例外(ヒトの側 and ウイルスの側の因子)を除いてヒトには通常感染しないし、H1 のウイルスはヒトには原則的には感染しない。これは鳥の細胞表面にあるシアル酸の立体構造がヒトの光学異性体になっている為だ。
“突っ込み”は引用の後にも続けるが、とりあえず、この記事を読んだ人が感じるであろう事は、以下のようじゃないのかな?
・インフルエンザという病気は、治療薬を使用しないと治らない。
・CS-8958は、タミフル、リレンザとはかなり違う画期的な治療薬である。
とんでもない誤解である。
2010年2月2日 提供:共同通信社
第一三共は1日、インフルエンザ治療薬「CS-8958」を国内で製造、販売するため厚生労働省に承認申請したと発表した。承認されれば、研究段階の創薬から自社で手掛けた初の「純国産」治療薬となる。2010年度中の発売を目指す。
現在主流の治療薬である「タミフル」と「リレンザ」、さらに塩野義製薬が日本での開発を担当し1月27日に発売した「ペラミビル」(商品名ラピアクタ)は、いずれも創薬は海外の製薬会社が手掛けている。
これに対して、CS-8958は創薬から開発、製造、販売まで一貫して第一三共が担う。タミフルやリレンザが5日間続けて服用する必要があるのに対し、CS-8958は1回の服用で済む特徴もある。ペラミビルも1回で済むが点滴薬で、専用器具を使って粉末を吸い込むCS-8958とはタイプが異なる。
CS-8958は新型インフルエンザや鳥インフルエンザへの効果も期待できるという。
第一三共は、CS-8958をインフルエンザの治療だけでなく予防にも使えるように臨床試験を実施中。海外での販売も目指してオーストラリアの製薬会社と共同で試験を進めている。
ザナミビルとCS-8958の構造の違いをご覧頂こう。

ハッキリいって、ほとんど差が無い。この程度の違いであれば、既存薬の耐性化を回避できる程度だろう。それとて、時間の問題だ。(単なる偶然で耐性化ウイルスの出現を許さない場合もあるだろうけど、宇宙的な確率)
左は、富山化学の抗インフルエンザウイルス薬 T-705 の構造だ。これは、ご覧の通り、ピリミジン塩基の骨格を持つアナログだ。当たり前だけど、RNAポリメラーゼを阻害する。画期的というのなら、100万倍もこちらの方が、スゴイ。(凄さをマスコミ的表現を使ってみました。なんとなく、わかりすい事に、驚きです。。麻薬並み、こんな“非科学的”な表現、中毒になりそうです)
もっとも、ヒトRNAポリメラーゼまで阻害しちゃったら、それって、、、、、抗がん剤と一緒ジャンって・・・・心配する人がいるかも知れないけど、そんな心配するなら、ヒトの60兆個の細胞表面にあまねく付いている糖鎖のひとつであるシアル酸をターゲットにするアナログの未知の恐怖にも怯えねばなるまい。シアル酸の機能がわかっていないんだからね。
あっ!インフルエンザウイルスが感染する為に存在しているわけじゃないよっ!シアル酸!
細胞表面に発現する物質は、細胞間の情報伝達を担っている。シアル酸はまだわかってないだけって事。そのリガンド(メッセンジャー)の情報伝達を偽者のタミフル、リレンザが途中で中断しちゃう!異常行動との因果関係を100%否定できない理由にもなるかな?!
それに、画期的っていうなら、インフルウイルスRNAに対する miRNA を治療薬として開発するのが、現時点で理論的に最高の画期的な薬剤っていえるんじゃない?特異性という面からも、予防的にも使えるし。まぁ、未知の副作用は、どれも似たり寄ったり。それほど、現代医学とて“生命の仕組み=生きている”ことの理解が浅いのだけど。
どちらにしても、自然治癒するインフルエンザで、抗がん剤にも匹敵する副作用があるかもしれない薬を使おうとしている事には、驚きを隠せない、ワタシ!でも、こんな事を非人道的って指摘するマスコミ人は皆無だ。ただし、科学の進歩と言う面からみれば、戦争にも匹敵する非人道的な医薬品開発は、必要なのかも知れない。まっ、副作用が出なけりゃ、結果オーライって事は、全ての医薬品に共通のことだけど。だから感覚麻痺に陥っているともいえるんだけど。。。
インフルエンザと言う病気は、本来、狂犬病と一緒で、予防が一番。治療は、原因療法に見えて、ほんとは対症療法なみ。
発熱して、受診する頃には、ウイルス量はピークを迎えているという事実がその理由だ。CS-8958は、予防にも使えるように臨床試験を実施中とのことだが、この手の薬の使い方としては、ベター。メーカーは上手に開発を行って欲しい。
さて、もっとも、気になるであろう『有効』と言う表現に話を戻すが。。。。
科学的ではないというのは、何を以って有効とするのかを示していないというところだ。例えば、カール・ルイスは速いというのと同じ。
人が『カール・ルイスは速い』と聞けば、誰か他の走者(人間)が相手だと無意識に“想像”する。でも、実際には競争相手を示しているわけじゃない。ホントは、動物のチーターと走ったのかも知れない。
「インフルエンザに効く」って聞けば、これを飲めば、誰でも確実に100%すぐに治り、死ぬような事は無いって思うんだろう。
とんでもない勘違いだ。タミフル・リレンザ同様、重症化して死にいたるリスクを回避できる証拠はどこにもない。
報道記事は、「発熱期間、4日間が3日間に短縮できる効果を持つ」とハッキリと書かねばならないのだ。
ところで、MMJ 2010年1月号の巻頭に東京女子医科大学名誉教授 岩田 誠 氏の文章があるんだけど、マスコミの科学的思考力の無さを痛烈に批判している。(いいぞっ!いいぞっ!)インフルエンザに関する馬鹿丸出しの表現に、いたくご立腹の様子なのだ。
例えば、「新型インフルエンザでは、小児喘息患者では重症化することが多い」に対し、“多い”は何に対してどれくらいの率で多いのかをハッキリせよ!とし、「新型インフルエンザで死亡した患者数が100名になった」に対しては、不安を煽る以外に何の意味も無いと断言し、数字に意味を持たせるなら、その母集団となる罹患患者数(症状が現れて、しかも受診した数)を示し、正確な死亡率を、季節性のそれを対照としてと同時に示すべきだ!としている。
私が思うに、マスコミの連中は、ニュースを伝えるのに小説の類と同じ表現方法しか取れない。。。結局、文系の人達の限界。無意識のうちに、読者、視聴者の感情に訴える方法を取ってしまうのだろう。客観的な事実を示す方法を学んできていない。ここが、理系人間と、根本的に違うところなんだと思う。(いや、理系の人間でもマスコミに席を置くと、朱に染まるんだけど・・・結局、お金・・・かっ?)
もひとつ、日経メディカルオンラインでは、こんなタイトルのブログ記事があった。
『勘違いしていませんか? ワクチンの「有効率」』
執筆者は、「ワクチンが「有効」と判定された場合、単純に「打っておけばその病気に(絶対)かからないこと」を意味すると思っていませんか。実はそうではないんです。」と書いている。先日のNew England Journal of Medicine誌に、申請中のロタウイルスワクチンに関する論文が発表されたので、ネタにしたと書いているのだが、、、
医療従事者でも、このような勘違いをしている・・・・・(のか?でも、このサイトは有資格者限定だから、一般の人は閲覧できないはず・・・・・?)
ワクチンの臨床試験がわかりにくい理由のひとつには、統計学の理解しづらさがある。それも大きな理由だし、文系の人が“印象操作に走る原因”にもなっている。
私は、もう一つの大きな原因は、“人道面”を考慮せねばならないため、わかりやすいプロトコルを組めないところにあると思っている。みんな思っているんだけど、口に出せないんだろうなぁ!
ロタウイルスワクチンに関する論文でもそうなんだが、治験参加者をワクチン接種群と対照群に分ける。エンドポイントは、重症胃腸炎=「通常より緩い便が24時間以内に3回以上」と定義される下痢が出現した場合。ここまではいい。だけど、それ以降は、自然感染にまかせて、経過観察、後、罹患患者の数を比較しているのだ。
結果、ワクチン群の98.1%は重症胃腸炎にならず、一方で、ロタウイルスワクチンを飲まなくても95.1%は重症胃腸炎にならなかった。。。。。「なんだよ、それ?ワクチン飲んでも飲まなくても、普通に生活している分には、意味無いじゃん」って思うでしょ??これをRR(相対リスク)で表すと、1.9%÷4.9%=0.388、RRR(相対リスク減少)=1-RR=1-0.388=0.612となる。
ワクチンの有効率(エフィカシー)は通常、このRRRをパーセンテージにしたもの(61.2%)で表される。
これは、「ロタワクチンを服用したら、服用しなかった場合に比べて、重症胃腸炎が起こる可能性が61.2%減る」、言い換えると「仮にロタワクチンのない状況で、ロタウイルスによる重症胃腸炎になる人が100人いた場合に、その100人がロタワクチンを飲んだとしたら、ロタウイルスによる胃腸炎が61.2%減って38.8人になる」という意味だ。
なんだか、わかったような、わかんないような、、、、、
これをわかりやすくする方法は、治験参加者をワクチン接種群と対照群に分ける。そのあと、病原体であるロタウイルスを全員に飲ませる!!
これで、ワクチン群と対照群で、重症胃腸炎を発病した人の数を比較すれば、直感的で、誰にでも、ワクチンの効果が良くわかるはず。しかも、プラセボの対照群が100%発病する量を投与できれば、もっと良い!!
おっと、完全に暴走してますね。私、、、、
ところで、インフルエンザウイルスなどを扱う病原微生物学では、細菌やウイルスを分類することから、学び始めるわけだが、、、、
なんというか、この分類方法は、イロイロあって、かなり統一性が無い。。。パスツールやコッホの時代に花開いた、近代医学の最初の花形分野で、研究者も百花繚乱、、、
いや、最初から、ヒトにとっての“病原性の強さ”のみで分類しておけばよかったものを、免疫学的に分類してみたり、物理化学的に分類してみたり、、、、と、いろいろやっているおかげで、、、、、
たとえば、赤痢菌属と大腸菌属はDNA-DNA分子交雑法では両者を区別することができず、遺伝子に基づく分類学上ではこれらは同種という位置づけになるワケだけど、今、一般庶民だって、大腸菌と赤痢菌が違う菌だってくらいは知っている。
何をいいたいのかと言うと、、、、
たとえば、インフルエンザウイルス、、、、、強毒性に変異したら、名前を変えれば、、、っていうより、別のウイルスって事にすれば、一般庶民も、マスコミに扇動されてパニックなんぞ、起こさなかったのではないか・・・・・?と、思うわけだ。
マスコミが、こんな調子で、門外漢の知ったかぶり、無知、頓珍漢な科学的非常識を、未来永劫、繰り返すだろう事は“本能”だから仕方が無い。それよりも、理系の人間が、、、いや、医療に限って言えば、誤解されそうな所は、関係者が、片っ端から、修正して言っちゃうってのは、どうだろう?
シロウトが、ワクチンが余ったって話に、「それみろ、税金の無駄遣い」とか「騒ぎ過ぎ」、あるいは、「歴史を勉強しろ!インフルエンザは死ぬ病気だぞ」みたいな、無意味な論争を繰り返さなくてもすむ。。。。。(しかし、「インフルエンザは死ぬ病気だぞ」ってシロウトの意見をネットで見たときは苦笑した。ひどいねぇ。普通の風邪だった死ぬ病気っていえるじゃん。これじゃ、全ての病気におびえなきゃならない・・・)
インフルエンザウイルスが強毒性に変わった時点で、呼び名を変える。というか、新種のウイルスが出現したってことにすればよい。ゴジラウイルスとか、すげぇ~強そうな名前に!!
インフルエンザのままにしておくから、デマ、風評、扇動のネタにされる・・・・・・?
ん?まてよっ??楽しんでんのかぁ?ヤツラは・・・・・・?じゃ、ほっとくかっ!