新発見ではないのだが、認識を新たにしなければならない事が、2つ、明らかになった。(トピックス参照)
ひとつは、テオブロミンの咳止めとしての効果。
もう一つは、蛋白質のリン酸化に機能の on-off 以外の効果があるというもの。
テオブロミンと言えば、私が学生の頃の薬理学の教科書にも載っている位だし、古くから発見されているカカオに含まれる天然の核酸代謝物として認識していた。コーヒー豆のテオフィリン、カカオのテオブロミンにお茶のテオフィリンの“三兄弟”として『中枢神経の興奮作用と気管支拡張作用の違いを化学構造の違いから認識する』代表的なモデルとして、頭に叩き込んだ記憶がある。(メチル基の数と有無の違いだから、コーヒー、茶、カカオに量の違いこそあれ、みんな入ってるのだが)
そして、テオブロミンはどの作用に注目してみても、カフェインとテオフィリンの中間の力価しか持たず、医薬品としては使えないものだと認識していた。
今、何故、テオブロミンの咳止めの効果を再試験してまで評価し直したかったのかは定かではないが、英国立心臓肺研究所のピーター・バーンズ博士らが、「米実験生物学会連合雑誌」へ報告論文として投稿している。
なかなか、、、良いらしい。。咳止めとして。
とすると、健康おたく番組に取り上げられて、チョコレートの売り上げは伸びるのかな???それとも、特定保健用食品扱いになるのかな???
---やめてほしいなぁ---
もう一つは、蛋白質のリン酸化の再認識。
Science誌 July 1, 2005, Vol.309 に掲載された論文から。
こちらは、『う~~~む、やっぱりな』ってところか。人間の生命活動を構成するあらゆる要素は、デジタルではなくアナログだとは思っていたが、それは漠然とした考えであって、確固たる理屈を知っていた訳じゃなかった。
ただ、どう見ても、表現型はアナログであるから、そうなんだろうと思っていただけだ。最小の構成単位はデジタル(有るか無いか)で、システムとしてトータルした結果、アナログになるのかなぁなんて考えていたのだ。
それが、最小とも言える単位の“リン酸化による蛋白質機能の on-off”にまで、子供の頃作ったラヂオの部品“バリコン”のような、無段階可変のような仕組みが存在していたとは、なかなか、驚きでもある。
遺伝子の転写制御因子 Ets-1が、リン酸化される部位の数に応じて段階的DNA結合親和性を示すということなのだが、結局、リン酸化をコントロールする事で、段階的に遺伝子の発現をコントロール出来るってことなのだが、これは、、、
---なんの役に立つのかなぁ?---
って素直に思ってしまう。
例えば成長過程において不足すると困ってしまうホルモンなどは、後から注射と言う形で補う事で、なんとかその不具合を免れているのだが、量の問題は、個人差もあって、決定的な指標が無い。
遺伝子の発現をコントロールするにしたって、同様の事が言える。
何かの目的の為に、遺伝子の発現をコントロールしたい訳だが、量的にどれくらいコントロールすれば結果が出せるのかが、全くわかっていない現状では、ブタに真珠と言ったところか。
でも、基礎科学の発展とは、もともと、そういったものだから、これはこれで良いのだと思う。この方法を武器にして、逆にコントロールする量的な問題を解決していけば良いのだから。(だけど、気の遠くなるような作業に違いない。)
ちょっと前、ノーベル物理学賞受賞の小柴博士が『何の役に立つのか、自分でも解らない』って言っていたのを思い出してしまった。