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LTP と LTD はシステムバイオロジーから

20061031_szoborpark_07.jpgLTP (long term potentiation) と LTD (long term depression) は同じグルタミン酸の刺激を受けながら、どうして?片や持続性の興奮が起き、片や持続性の抑制が起きるのか?これは動物の学習記憶の基本的な本態なのだが、今まで、謎だった。

答えはシステムバイオロジーの分野から。

この分野の第一人者、東大の黒田真也教授に言わせると『バイオインフォマティクスはコンピュータを通して生命現象を解明するテクノロジーで、システムバイオロジーは物理学や工学の視点を加えて生命現象を探るサイエンスだ』と。平凡な脳の私には違いが良く分からないが、『誤解を恐れずに』と断っている所をみると、正確な定義は、まだ、ないのかもしれない。

こういう隙間っていうか、既存の学問間の新しい領域から生まれる学問は、パワーがあるなぁ!!って感じる。そして、コンピュータの使用が生物系の実験にも必須になりつつあるということなのだろう。(最近は“フェノーム”なる言葉も登場してきている。gene に対して genome と同じで、phenomenon , phenotype に対応する“オーム”である。代謝物と生物種のデータベース、化合物を代謝経路ごとに分類する。20年はかかる・・。そして蛋白質と蛋白質の相互作用・・2種類のみならず数種類の相互作用・・・。元に戻ってメタゲノム。。コンピュータ使わなきゃ、話にならないよな。究極はコンピュータ上で生体システムの構築なんだから。計算するには量子コンピュータが必須って訳だ。)

で、LPT と LPD に戻るが、その答えは一言で言えば“アロステリック効果”だったと。蛋白質が何故三次元構造を取っているのか?を逆説的に説明するアレだったのだ。黒田真也教授の業績である。(アミノ酸のシーケンスが生命現象を規定しているのではないのだ。コンフォメーションが大事!!)

理系でない方にも説明すると、アロステリック効果のアロステリックとは、別の場所という意味で、空間的に離れた2つの結合部位が分子のとりうる三次元的配置の変化によって、相互に影響を与えあうというものである。

生命現象のフィードバック阻害や脱抑制などの調節を行うことで、多くのタンパク質で見られる現象だ。

20061031_concept.gifアロステリック効果は、よく、ヘモグロビンと酸素の結合で説明される。一個も結合していないヘモグロビンと酸素の結合し易さより、一個結合しているヘモグロビン、一個より二個、二個より三個となるあれである。したがって、酸素分圧と結合量はS字曲線(非線形)になるというアレだ。(図は最初の一個が付くと二個目が付き易い事の概念を示している)


その他、この分野からの成果として挙げられるのが、PC12細胞の一過性ERK活性化が細胞の増殖に繋がり、持続性のERK活性化がが細胞の分化に繋がるという事。要するに増殖因子の投与のスピードと濃度が決めてだったと。

これも、非常に興味深い。いろんな現象のなぞ解きのブレーク・スルーになりそうな予感がする。今の日本でノーベル医学・生理学賞に一番近いと言われている大阪大学の審良(あきら)教授の研究分野が自然免疫だ。初期の生体防御を担う分野だった為、人気が無かった分野だったのだが、氏のおかげで、免疫系研究に革命が起きている。古くからあったけど最新の分野だ。進化論にも言える事だと思う。

既存の価値観で結果を解釈する事に限界が生じた時、新しい価値観=学問が台頭するのかもしれない。『PD様の脳障害にニコチンが保護効果』でも紹介した【神経経済学】しかり【進化生物学】しかり、である。


ところで、このような新しい分野に付き物の《ひねくれた解釈》を痛烈に批判している論説を紹介しよう。

ハーバード大学の Stephan Jay GouldとRichard Lewontinは、1979年に発表された有名な論文で、進化生物学者の中には、生物のわずかな差異も、進化論でいう「適応」で説明しようとする者がいることをからかった。

「話は複雑になるかもしれないが、生命のすべての特徴は適応として説明できる」というような論法は、フランスの作家ヴォルテールの小説「カンディド」に登場するパングロス博士を思い出させる、とGouldとLewontinはいう。パングロス博士は、いかなる物事にも、すばらしい目的を見出す。たとえ、その推論がどれほどばかげていてもだ。「鼻はメガネをかけるためにできた。だから、私たちはメガネを使う」といった具合に。

GouldとLewontinが「パングロス博士的な(つまり楽天的な)パラダイム」と呼んだ傾向は、盛んになってきた研究分野「進化心理学」にも明らかにみられる。

この分野では、人間の行動の特徴を適応で説明しようとする。中でももっとも評判が悪いのが、強姦(ごうかん)に関するものだ。

Randy ThornhillとCraig Palmerは、著書「強姦の自然史:性的強要の生物学的基礎」(A Natural History of Rape:Biological Bases of Sexual Coercion、マサチューセッツ工科大学出版、2000年)の中で、強姦は、強姦以外に女性と性的接触の機会がほとんどない男性の生殖の機会を増やすために進化したという、論議を呼ぶ主張をしている。

カリフォルニア州バークレーにあるカリフォルニア大学のPhilip T.Starksと、ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学のCaroline A.Blackieは今回、この仮説を支持する論文を、Proceedings of the Royal Society of London(英国学士院会報)に発表した。皮肉にも、GouldとLewontinの21年前の論文と同じ論文誌だった。

StarksとBlackieによると、逐次単婚(一夫一婦制の結婚を、相手を次々と変えながらすること。統計には離婚と再婚として記録されている)によって、米国男性のいくらかは、生涯を通じて出産可能な年齢の女性を次々と独占できることが、米国の統計資料から分かるという。これは、他の男性が、女性とそのような接触ができないという代償の上に成り立っている。

この研究者たちは、「進化論的観点から言うと、男性の生殖の成否にこのような差があるため、相手のいない男性は、かわりの生殖戦略をとらなければ、成功した男性に女性を独占されてしまうだろう」と主張する。

ここでStarksとBlackieが想定している「戦略」は、強姦である。

彼らは、米国における離婚率と強姦には正の相関関係があることを示唆している。因果関係の証拠のない相関は、常に話半分に聞いておくべきだ。旧西ドイツでは、出生率の低下がコウノトリの数の減少と関係づけられたことがある。よく子供に冗談で「赤ちゃんはスグリの木の下で見つけたのよ」と言うものだが、相関を過信すると、赤ちゃんとスグリの木に関する仮説さえ考え出してしまうかもしれない。

この研究者たちは、出産可能な女性が強姦によって妊娠する確率は5%だとも言っている。これは、通常のセックスによる妊娠率(1.2%)を上回っている。さらに、強姦による妊娠が流産する率(11.8%)は、通常のセックスによる妊娠が流産する率(13.8%)よりも低いという。彼らは、これらの統計を異なる種類の資料から集めたことを認めている。そして、妊娠にいたった強姦の報告の基準は、資料によって異なるかもしれないという。しかし、彼らは、「憂慮すべきだが推測にすぎない」解釈を提案するのに、これらの数字を用いている。彼らは、強姦は通常のセックスよりも赤ちゃんを得るのに効率的な方法であり、だから、進化論でいう「適応度」が高くなるというのだ。

これから、StarksとBlackieを驚くべき考えを思いついた。「強姦をする男は、子供を宿す可能性の高い女性を見分けることができ、そうした女性を優先的にねらう」というのである。この研究者たちは、この結論にさまざまな注意をつけ加えている。いわく、彼らの結果は強姦を正当化しているのではない、強姦犯は自分が強姦をする進化論的な理由に気づいているわけではない、などなど。

この驚くべき主張を確かめるには、明らかにもっと研究が必要だ。

StarksとBlackieは、離婚と再婚の記録の進化論的解釈から推論した。しかし、これらの記録は強姦については何もふれていない。それだけでなく、これらの公的記録は、通りすがりの男女の交際については何も教えてくれないが、そうした交際で今回の話題にかかわるようなことが起こらないとはいえない。

さらに、こうしたデータは、夫あるいは妻が不倫したくなる傾向も明らかにはしてくれない。この研究者たちは、強姦が社会の病理として、単なる授精以外の目的を持っている可能性を軽視している。強姦犯は、出産年齢の女性だけでなく、男性、女性を問わず、子供も老人も襲う。強姦は、戦争や少数民族を服従させる際には、「武器」として使うこともでき、実際に使われてきた。それが、進化の上での何らかの役割を果たしているという提案は、不快であり、不必要だ。

こりゃ、酷いね!こんなヤツの理論と同列に見られたんじゃ、進化生物学者はたまったもんじゃないよな。でも、常識で考えて、これを納得するヤツはいないだろうけどね。


私も、最近、生命現象の合理的な解釈を“進化”に求める事が多い。『お仕事ブログ』読んで下さっている方はご存知だと思うが、ここで私は、疫学的な研究論文を、ナンダカンダと難癖をつけてこき下ろしているが、その根拠は進化生物学に因る事が多い。(薮にらみに近いと思うけど、強姦理論と同列に見られたんじゃ不本意である。・・・苦笑)
 
 
 
国の舵取りや教育問題の解決には、『新しい事を思いついたから、やっちゃえぇ~』って訳にはいかないのは分かってるけど、今まで通りのやり方=解決方法では、どうにもならない事も事実である。

言葉を飾れば『誰が先鞭を付けるか』であり、言葉を汚くすれば『誰がババを引くか』である解決策も必要だ。

そして、今までに無い事をやらなきゃならない時期に来ているんじゃないのかな?戦争が60年も無いという事自体、生物的じゃないんだから、そろそろ、随所に歪みが来てるんじゃないの?人を殺しても死刑にならない。殴っても殴り返せない世の中、これも異常だよ。『生徒は学校から帰宅した後、部屋で「まじめで何が悪い。一生懸命やって何が悪い」などと言いながら、よく泣いていたという。』この子が虐めた生徒に逆襲して『暴力はイケナイ』っていうのなら、殴られ損、殺され損を何処でガス抜きをするか?
小さなところから、『目には目を』も一つの方法。新しいルールを決めてね!!裁判所が“仕返し”のお墨付きを出すとか・・・!

強姦理論を振り回して、強行突破する事だけは防がなきゃならないけどね。
 
 
 
なんども言うけど『個体差がある生命現象を古典的平均値で切る“疫学”は、既に限界を迎えている』と。『疫学は老害になりつつある』『老兵は去るのみ』である。『誤解を恐れずに言えば』・・・だけどね。(民主主義を否定しているわけじゃないよ。少数意見にも優れたものがあるなんて政治の世界で言ったら、社民党・共産党の強姦理論並みの下衆なロジックまで相手にしなきゃならなくなるからね。・・笑)

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2006年10月31日 11:07に投稿されたエントリーのページです。

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