いつもいつも、スタチン系薬剤の事を NNT 100以上の薬だとボロクソに言っている私だが、これは、現在のスタチン投与開始時における判断が、ただ単に『コレステロール値が高い』だけで決定されている所にある。
コレステロールを高いまま6年間放置しても発病する人が100人に3人で、スタチンを服用すると100人中2人にまで減少する。だから発症予防効果33%だという、笑うに笑えない mega study なるエビデンス、最近ではこれを根拠に無益な投薬が繰り返えされる・・・・これが現実だ。(古代ギリシャではこれを詭弁と言い、現代では経営に多大なる貢献をしている)
しかし、それはスタチン系薬剤が悪いわけじゃなく、たくさん使ってもらおうとするメーカーの利益優先主義と、『儲けたい』という本音を隠しつつ国民の健康という錦の御旗を振りつづける医療機関と、薬を飲んでいれば病気にならないという神話に心の拠り所を求める大衆の、いわゆる“トリニティ(三位一体)”がなせる業だ。
そして、『どうせ国民には理解不能だろう』『俺達にも良くわかんないし』『製薬メーカーは大事なスポンサーだし』と言う理由で、今回のタイトルのような知見を大衆に知らせようとはしないマスコミがそれを助長する。今回、紹介する LANCET に掲載された論文は、スタチン系の NNT を50 (数字に意味は無い。小さいという象徴)に出来る内容かもしれないのに・・・・なのだ。
それは、『冠動脈疾患リスクとスタチン著効群をテロメア長で予測する』という、薬を飲ませる前に、その恩恵にあずかれる(副作用を防げる。飲まないんだから副作用は出ない)人を篩いにかけることが出来る検査についての内容だ。
そもそも、テロメアとは・・・・
木に、おいしそうな実が付いていた。
「ねえ、これ食べてみたい」
「えー、だって食べちゃだめって言われただろ」
「意気地なし。男でしょ」
「関係ねーだろ」
「じゃ、あたしが食べたら、あんたも食べなよ」
「やめとけって」
ふたりの声を聞きつけて、木の上から誰かが出てきた。
「何、もめてんの、おふたりさん」
「この実を食ようっていうのに、この人ったら叱られるのが怖いんだって」
「怖いなんて言ってねーよ」
「食べたらいいさ、オイラだって毎日食べてるから」
「ホント?」
「ああ、大丈夫さ。さあ、食べてみな」
疑いもせず少女は実を取り、食べてみた。
「おいしい」
「マジ、大丈夫?」
「ほんと、意気地なしなんだから、はい」
言葉とは裏腹に、小首を傾げ、にこやかに少女は実を差し出した。
かわいい。
男の理性は、この程度で十分崩壊するのだ。
手渡された実を少年は一口齧った。
その途端。
どこからともなく声が鳴り響いた。
驚いた少年は喉に齧った実を詰まらせてしまった。
「その実は食べるなと言っておいたはずだぞ。お前達は私との約束を破ったので、寿命を持ち、産む苦しみを知るだろう。そして、木の上のお前は、地面を這いずるがいい」
木の上の何者かは、手も足も失い、地面を這いずって逃げて行った。
蛇である。
蛇に騙されたと知った少女は、それ以来、蛇を忌み嫌うようになった。
少年は喉に詰まらせた実が瘤のようになった。
喉仏である。
そしてふたりは住んでいた園を追放された。
この時に、テロメアが制限されたものと推測することは容易である。
テロメラーゼを多く含む生物があるという。
それは海洋生物であった。
ある漁師の網にそれがかかっていた
「これを食らえば不老不死になるそうだ」
「本当かい、お前さん」
「ああ、俺はお前にいつまでも若くいて欲しいからな、喰ってみろ」
「何だか、気味が悪いよ」
「でえじょうぶだって。なんなら俺が喰って見せっから」
「じゃあ、一緒に」
「よし、そうしよう」
大ぶりの出刃で肉を切り取ると、ふたりは醤油に付けて食べた。
やはり日本人には醤油が一番である。
「結構、うめえな」
「鰐みたいだね」
鰐とは、今でいう鮫のことである。
「な、大丈夫だ」
「これで、本当に不老不死になるのかねえ」
「すぐにゃあ解らねえさ」
しかし、結果は意外と早く知ることが出来た。
男は1年も経たないうちに全身に瘤が出来て死んだ。そして、女房は葬儀を済ますと、出家し、夫を供養し続けた。
800年に渡って。
それは、その比丘尼にとって、あの日網にかかった上半身が人で下半身が魚の肉を食べたことを後悔し続ける日々であった。
細胞核の中に染色体がある事はご存知だと思う。DNA の紐だ。ヒトの場合は46本に分かれている。この『分かれている』事を実現しているのがテロメアだ。
じゃ、別れてないとまずいのか?
ヒトが原始地球の頃から、一本のまま進化して今に至っているなら、分かれている必要はないけど、分かれている状態で進化して今があるから、分けれていないとマズイ。
じゃ、テロメアがなくなるとどうなるのか?
染色体1本1本の末端を保護しているのがテロメアだから、無くなると癒合したり架橋したりして、正常な機能と正常な細胞分裂が出来ずに死に至る。
ところで、テロメアは特殊な条件(テロメラーゼが発現している細胞)以外では、分裂を繰り返すたびに、ちょっとずつ短くなるように出来ている。だから、テロメアがなくなる時期が細胞の寿命・・・・。
生命現象に意味を持たせるのは文学や哲学の仕事だが、わかりやすくする為に敢えて現象に意味を与えるとすれば、DNA は日々紫外線や放射線や活性酸素などで破壊され、その遺伝情報も破壊される。通常は破壊された部分を修復する機構があるが、ちょっとずつ溜まった歪や修復しきれないほどの損傷を受けると異常な遺伝子が伝えられることになってしまう。このため、テロメアは、DNA の複製回数、即ち細胞の分裂回数を制限しており、その目的の為に存在しているとも言える。(免疫系による恒常性の維持は、また違う話なので、ここでは触れない)
そして特殊な条件と言えるがん細胞はテロメアを複製する酵素、テロメラーゼを使っていつまでも生きつづける。
実験で使われる HeLa(ヒーラ)細胞は、歴史上はじめて安定的に継代培養に成功したヒト細胞であり、子宮頸癌を患った Henrietta Lacksさんという一人の黒人女性から採取された細胞であるというのは知る人ぞ知る話。最近一般誌などでもよく目にし、捏造が発覚して韓国科学界や政界までもを揺るがした“幹細胞”も同じ理屈で限りなく分裂を続ける・・・。(精子の元も同様)
さて、現在までテロメアはどちらかというと、主に“がん”の分野で研究されてきたわけだが、“がん”以外でもテロメア長と寿命が正の相関関係にあること、精神的ストレスでテロメア長短縮が加速する事、テロメア長は出生時でも個体差があること、テロメア長とがん死には負の相関関係がある事、などが、報告されている。
大事なのは、みな、生まれた時に平等に同じ長さのテロメアを持っている訳じゃないということ!!
だから、テロメア長が長い人には、スタチン系は必要なく、テロメア長の短い人こそ、よりスタチンは必要だという事になる。この論文でもそのような事が書いてある。そして、老化しているから動脈硬化しやすくなっているって理由のほかに、スタチンが直接テロメア関連蛋白に影響を与えているとも書いてある。
症例を選ぶ為の根拠として、遺伝子診断が信頼できる内容になるまでの間、使えそうだと思うし、医療費を抑制したいなら、『ジェネリックに変更しろ』と言う前に、薬を飲む人を選別しろ!って言いたいんだけどね。
でも、、、、、本当に、テロメア長を測って、、、、っていうより、スタチン系がテロメア関連蛋白に影響を与えているとすれば、(ファルネシル酸とRasの話は置いといて・・・)ちょっと、まってよ!!!って事になる。NNT どころの話じゃない。
テロメアは、アダムとイヴが林檎を食べてエデンの園を追い出されたの如く、禁断の領域だ。ONが良いのかOFFが良いのか?+が良いのか-が良いのか?陰が良いのか陽が良いのか?って事ではなく、そのバランスが大事で、タイミングと量が大事で、どの場所で発現するかが大事で、、、、と、人間が手を出せる領域では、まだまだ、ない!
そんなものに影響を与える薬を、コレステロールが高いだけで、安易に飲んで良いのか??(テロメア測って、ゼチーア飲ませるんなら、その点では良いけど)
と、ちょっと、神経質になってしまったが、まぁ、コレまでも人間は禁断の果実をむさぼり続けているんだから、いまさら・・・・・だよね。結果よければ、って事で、少なくてもテロメア弄って、長生きするかガンになるかを心配するより、目先のリスクを減少させられればそれで良しとするのが良いのかも。
だからこそ、飲まなくてもいい人に飲ませちゃいけないんだけどな。
気になる人は、読んでくだされ。
Telomere length, risk of coronary heart disease, and statin treatment in the West of Scotland Primary Prevention Study: a nested case-control study.
SummaryBackground
Inter-individual differences in biological ageing could affect susceptibility to coronary heart disease. Our aim was to determine whether mean leucocyte telomere length is a predictor of the development of coronary heart disease.
Methods
We compared telomere lengths at recruitment in 484 individuals in the West of Scotland Primary Prevention Study (WOSCOPS) who went on to develop coronary heart disease events with those from 1058 matched controls who remained event free. We also investigated whether there was any association between telomere length and observed clinical benefit of statin treatment in WOSCOPS.
Findings
Mean telomere length decreased with age by 9% per decade (95% CI 3·6–14·1; p=0·001) in controls; much the same trend was seen in cases (−5·9% per decade, −3·1 to 14·1; p=0·1902). Individuals in the middle and the lowest tertiles of telomere length were more at risk of developing a coronary heart disease event than were individuals in the highest tertile (odds ratio [OR] for coronary heart disease: 1·51, 95% CI 1·15–1·98; p=0·0029 in the middle tertile; 1·44, 1·10–1·90, p=0·0090 in the lowest). In placebo-treated patients, the risk of coronary heart disease was almost double in those in the lower two tertiles of telomere length compared with those in the highest tertile (1·93, 1·33–2·80, p=0·0005 in the middle tertile; 1·94, 1·33–2·84, p=0·0006 in the lowest). By contrast, in patients treated with pravastatin, the increased risk with shorter telomeres was substantially attenuated (1·12, 0·75–1·69, p=0·5755 in the middle tertile; 1·02, 0·68–1·52, p=0·9380 in the lowest).
Interpretation
Mean leucocyte telomere length is a predictor of future coronary heart disease events in middle-aged, high-risk men and could identify individuals who would benefit most from statin treatment. Our findings lend support to the hypothesis that differences in biological ageing might contribute to the risk—and variability in age of onset—of coronary heart disease.