(『転写を“火事”とみれば、miRNA はFireman である。』by Oh!NO)
細胞:抗ウイルス作用をもつmiRNANature vol.449 (7164), (18 Oct 2007)
植物と無脊椎動物は、ウイルス感染に対する防御機構としてRNAサイレンシングを使うことができる。
今回、細胞内マイクロRNA(miRNA)に抗ウイルス機能があることが、哺乳類の細胞でも明らかにされた。
インターフェロンβは、ヒト細胞に存在する多くの細胞内miRNAの制御に関与し、その中の8種はC型肝炎ウイルスの塩基配列に対して活性をもつ。
また、細胞内miRNAの存在量の調節がインターフェロンβの抗ウイルス作用に大きく寄与することがわかり、これは、miRNAが哺乳類の自然免疫応答の機能成分であることを示唆している。
Letters to Nature p.919
であるなら、
マイクロRNAがバランスをとっている (MicroRNAs Strike a Balance)Science October 12, 2007, Vol.318
数百のマイクロRNA(miRNAs)が数千の標的メッセンジャーRNAs(mRNAs)を抑制していると考えられているが、しかしながら、個々のmiRNA-mRNAペア間の相互作用を調べるのは困難であった。
Choiたち(p.271,8月30日のオンライン出版)は、ある一つのmiRNAと特異的な標的部位間のその相互作用をブロックする方法を開発した。
miRNA結合部位に相補的なアンチセンスのモルフォリノオリゴヌクレオチドにより、特異的なmRNAをmiRNA-介在の抑制から保護することが出来た。
この技術をゼブラフィッシュの胚形成に適用して、彼らは、miRNA miR-430がNodalシグナル伝達経路のアンタゴニスト(拮抗物質)とアゴニスト(作用物質)を抑制していることを見出した。
抑制が失われると、シグナル伝達の不均衡と異常な発生が生じた。
Target Protectors Reveal Dampening and Balancing of Nodal Agonist and Antagonist by miR-430
p. 271-274.1
こんなことを利用して遺伝子発現を制御しようとする事、すなわち miRNA 機能を阻害するような物質を与える事は、ウイルスの miRNA に対する耐性を与えてしまいやしないのか???
こんな心配なんて、miRNA を抗ウイルス薬として自由に使いこなせるようになってから(何十年先の事やら)で良いのだろうけど、抗生物質“乱用”すら是正出来ない日本人には、こんな薬が出来ちゃって、それを人間の英知の結晶とかマスコミがもてはやしたりしたら、、、、それは恐ろしい。
ところで、言語学(ってヤツがどんな事をする学問なの知らないのだけど、それ)的に考えると、言語の違いによって“ある状態”が何処まで正確に言い表す事が出来るのか?と、ふと疑問に思い、日本語ってつくづく曖昧だなぁなんてしみじみ思った今日この頃。
例えば、『~~~は、まだよくわかっていない』という表現だが、これって曖昧で実態を言い表していない。
『わかっている』一つとっても、漢字で書けば『解っている』『分かっている』『判っている』などあるのだが、文章を書く時、これらの漢字の意味の違いを正しく使っている人って、どれだけいるんだろうか?
辞書など頼りに私流に解釈すれば、
『解っている』は、理解されている。英語では understand に相当する。
『分かっている』は、知っている。英語では know , get に相当する。
『判っている』は、判断がつく。英語では tell , judge かな?
とにかく、いっぱいある!日本語が学術論文に向かない理由もこの辺にあるんだろう。漢字がある分、単語が増えなかった??
kmoto さんがリチャード・ローズ著『死の病原体プリオン』のエントリーで書いている事が、ちょうど良いのサンプルになりそうなので使わせて頂く。『プリオン蛋白が何に使われているかわからない』という記述の『わからない』がすごく“解りやすい”と思うので。。。(強引なトラバネタでゴメンナサイ・・・苦笑)
一般的に一つの研究結果も出ておらず、それに関し全く何も知られていない事の場合に『わからない』を使うのだが、これは、『nothing な事を知っている』と言う意味になると思う。
しかし、色々な研究結果が出ているのだが、どれも核心を突くには至らず混沌としており“理解できない”状態でも『わからない』を使うだろう。
プリオン蛋白の場合、後者だ。
この場合は、おなじ『わからない』でも実態には大きな違いがあるにもかかわらず、、、である。一般の方には、専門に学んでこなければそれがどちらなのかは判断つかないのだが、でも、判断がつかなくても全く実害はない。結果は同じだからどちらの場合にも『わからない』で差し支えない。プリオンの機能が解ろうが解るまいが、病気になれば手の施しようが全くないし、もし、治療法が見つかったとしても100%致死の疾患に治療の是非の議論の余地はないからだ。
しかし、ここまでで話が終われば良いんだけど、『わからない』が一人歩きすると、本当はある程度解明されていてる事でも『わからない』と言った事が、全く解明されていない『わからない』と誤解されたり、その逆があったり、医療従事者(医師、薬剤師)により、その表現がまちまちになってしまって、言われた方は混乱する・・・・・、
このような状況が、今日の医療不信の根になるんじゃないのか?とふと思ったから、言葉って・・・・となったのである。
例えば副作用。
副作用の起きる機序なんて、似たような表現形でも違う場合もある。鎮痛薬の胃障害は“作用”だから増量すれば100人に発現させられるけど、こんなのは例外中の例外で、ほとんどは飲んでみなきゃわかんない。
この『わかんない』が、まったく解明されていないのかというと、そんな事はなく、かなり“解っている”のだけど、代謝酵素の多型なんて次元ではなく一卵性双生児だって、寸分たがわぬシーケンスの発現がエピジェネティック(siRNA , miRNA を含む)に影響される事を考えれば、地球上に誰一人として、同じ人間なんていないんだから、同じ薬を同じ量飲んだって、同じように副作用が出るわけじゃないので、『わかんない』って事になる。
『あそこでは、ただ“わかんない”って言われたけど、こっちでは懇切丁寧に説明してくれた』。これ、懇切丁寧な説明は良いけど、とどのつまり、その個人にとって“副作用が出るのかでないのか”の説明にはなっていない。
でも、結果が同じなのに、『わかんない』と『わかったようなわかんないような、丸め込まれた』では印象が違うわけだ。
まぁ、私なんぞは、副作用が出たらその対応だけはしっかり説明しなきゃならんと思ってるけど、可能性としての副作用を羅列して無闇に心配させるのがイイとは思わないし、必要以上に副作用を恐れてもねぇ!?
難しいのは、副作用が出ても、想定内で対応できればイイのか?っていうと、人(患者)によっても違うって事だろ。副作用が出ただけで、怒り出したり、治療に失敗したことにされてしまったりと、少なからずあるからねぇ。
これは、マスコミによる不確実なモノの筈である“医療”が確実なモノであると誤解させられている事によるところが、非常に大きいと感じている。
そして、副作用の質である。
服薬による有害反応がその個人に限定されるにしても話はややこしいのに、耐性菌出現のように社会問題化すると、また、話は一段とややこしくなる。
抗生物質が“好きで好きでたまらない”人に、このケースでの服薬はメリットはなくデメリットだけだよと説いても意味はない。
一旦、大衆に広がってしまった“都市伝説”を否定するのは難しい。“病院の屍体洗いアルバイト”や“黄色い救急車”、“芸能人カップルが膣痙攣で運び込まれる”なんてのは、殆どの人が眉に唾付けて聞いてると思うけど、医薬品の効果に関しては、そうはいかない。
例えば、知り合いが抗生物質で一命を取り留めたと聞けば、自分の病気も抗生物質で治るんじゃないか?と思ってしまう。大衆にとっては、その作用機序の難解さ(大衆には anti biotics だけでも難しい上に、それだけじゃない作用もあるから余計に!)からくると思うんだけど、なんの病気にでも効く万能薬であると思い込みがあるように感じる。
これはまさに都市伝説である。
そんな事で、将来、人類が手に入れるであろう“抗ウイルス薬”に対しても、要らぬ?心配をしてしまうのである。根拠のない心配ではなく、そういうことなら、こうなるのが必然ジャン!ってくらい、妥当性はあると思うんだけど・・・・・。
miRNA や siRNA による遺伝子発現調節機構を、『まだ、よくわかっていない』と表現する場合もあるだろうけど、すでに、こんな“耐性ウイルス出現”を危惧する事を考察できるほど、解っている分野でもあることを“わかって”ほしい・・・と。
で、これこそが、老婆心なんだろうなぁ。
p.s.
でも、siRNA , miRNA って意外と早く臨床応用できるのかも?!
がん細胞狙い撃ちし、抑制 新療法の可能性、名古屋大記事:共同通信社
提供:共同通信社【2007年10月15日】
遺伝子情報伝達を担うリボ核酸(RNA)の働きを邪魔する「RNA干渉」という現象を利用、がん細胞を狙い撃ちにして胆管がんの進行を抑えることに、名古屋大の浜口道成(はまぐち・みちなり)教授(腫瘍(しゅよう)生物学)と国料俊男(こくりょう・としお)研究員らのグループがマウス実験で成功、米国のがん研究誌に15日、発表した。副作用を伴わず、末期でもがんの進行を抑えて延命効果を得たという。現在外科切除しか有効な手だてがないとされる胆管がんに新たな治療法が生まれる可能性がある。
グループは、胆管がん患者十数人の細胞増殖に関係する遺伝子1176個を解析。がん組織では「Nek2」という遺伝子が活性化していることを発見。この遺伝子の活動を抑えるのにRNA干渉を利用した。
浜口教授らは、遺伝情報をコピーしタンパク質合成を指示する役割のメッセンジャーRNAに着目。メッセンジャーRNAを分解することができるリボ核酸のsiRNAを、Nek2を標的にするよう人工的に設計。そのsiRNAをメッセンジャーRNAにくっつけると、分解し、がん細胞は自ら死滅したという。
実験で、浜口教授らはこのsiRNAを人の胆管がんを移植したマウスに注射。その結果、がんだけが小さくなって死に、ほかの正常な細胞に影響が出なかった。また胆管がんが腹部に拡散し外科切除で治せない末期のマウスのうち、siRNAを注射したマウスだけが1回の注射で1週間程度延命、副作用もなくがんの進行を抑えられた。
同じ方法で膵臓(すいぞう)がんと乳がんの抑制にも成功。大腸がんにも応用できる可能性があるという。
浜口教授は「人体に投与できる薬の開発を進めたい。またこの方法でがんを小さくできれば、これまで治療が困難だった末期患者にも外科切除の余地が出てくる」と話している。