大腸菌の片利共生機序がまだ一般に知れ渡ったとは思えない今日この頃、またまた、常在菌であるピロリ菌の生体に及ぼす驚くべき影響が解明された。これを単なる驚きで終わりにしないで、無闇に“除菌・抗菌”への戒めまで高めてもらいたいところである。
知らない方の為に、大腸菌のスゲぇ~戦略をもう一度記しておくと、、、、
腸の上皮細胞は一定の時間で役目を終えて剥がれ落ち、その下から新しい細胞が分化してくる。そのターンオーバーは通常1日(24時間)といわれているが、大腸菌に新たに見つかった遺伝子は、この細胞のDNAの二重鎖切断を引き起こし、次には有糸分裂を妨害すると。大腸菌は細胞周期をブロックすることによって、腸管上皮の更新速度をゆっくりにしているのだ。
この事は、大腸癌の発生における微生物の役割についても示差している。
大腸癌だけに着目すれば、除菌することで目的(がん予防)が達成できるかのように見えるが、話はそんなに簡単とは思えない。更新速度をゆっくりにしている事が、臨床的な“がん”発生を抑制している可能性もあるからだ。
まっ、とにかく、抗生物質(抗菌剤)の乱用の抑止になればと思うんだけど、でも、抗生物質が完璧に細菌を駆逐しているかというと、いままではそんな事はないわけで、適当に“効いていた”から重大な影響が顕れなかったともいえるわけで、製薬メーカーが“完璧な”抗生物質を作り出すまでは、そんなに気にしなくてもいいし、そんなものは作れないのかもしれないけど。。。。
記事:共同通信社
提供:共同通信社【2007年10月11日】
胃がんや胃かいようを引き起こすとされるピロリ菌が、感染を維持するために、胃の粘膜細胞の寿命を延ばしていることを笹川千尋(ささかわ・ちひろ)東京大教授(細菌学)らが突き止め、11日付の米医学誌に発表した。
ピロリ菌の感染が長期間持続する仕組みの一端を解明した成果。抗生物質が効かなくなった耐性ピロリ菌でも除去できる新しい治療法の開発につながるという。
笹川教授は「感染の足掛かりとなる胃の細胞が脱落するのをピロリ菌が食い止めている。これは驚くべき作用だ」と話している。
ピロリ菌は、胃粘膜の細胞に感染するが、人間はそれに対抗するため細胞を次々に増殖させ、役割を終えた細胞を"自殺"させて、2-3日で表面の細胞を入れ替える防御機構を備えている。
チームは、ピロリ菌に感染すると人間と同様の症状を起こすスナネズミで実験。細胞死を促す薬剤を経口投与したところ、ピロリ菌に感染したネズミでは、細胞死が感染していないネズミの約半分だった。
さらにピロリ菌が分泌する病原性タンパク質CagAに着目。CagAを分泌しないピロリ菌を人工的に作り、感染させると、全く感染していないネズミと同程度の細胞死が起こることも確認された。チームは胃の細胞内に分泌されたCagAが、細胞死を抑える物質の働きを高め、細胞が延命されたとみている。
共同通信社の報道では、あくまでピロリ菌は“除菌”すべき“憎き敵”であり、この発見は除菌を成功させる新しい手段を得る為に利用できるというところを強調している。
しかし、、、、
単純に考えてもヒト(だけじゃなく全ての生物)の進化は細菌と共にあったわけで、その膨大な時間をかけて試行錯誤されてきた結果(共生状態)を、簡単に否定すべきじゃないと思うのだが、20世紀初頭のコッホに始まる細菌学の金字塔が、病原とはならない微生物をも除菌したほうが良いと言う“勘違い”に導き、除菌する事への“マイナス面”を隠蔽し忘れ去らせてしまったのだろう。このような報道の論調がそれを助長する。
さらに、近年のオフィスにおいて“脂ぎったきたないオヤジ”を罵る事に、何の躊躇いを感じなくなった世相が『オヤジの触ったモノは除菌すべし』を“良い事”にしてしまった事が“除菌”を助長していることは否めない。
そういうオフィスで慣らされた女性達によって、育児の現場は“除菌化”商品で埋め尽くされ、小さい子供達の遊び場や子供が外から帰ってきた時には“清潔癖”と見紛うばかりの“除菌作戦”を“普通の事”にした。
環境を不衛生にしろと言うつもりはないけど、行き過ぎたら“良くない”という立場が存在しない現状は、憂慮すべきだと思う。
自分達が子供の頃当たり前だった事、例えば手を洗わないでおやつを食べたって病気になんかならなかった。(躾の面からは大切だけど、衛生面からは的外れなのだ)風邪引いたって“抗生物質”なんて飲まなくたってケロって治ってた。怪我したって、たいした手当をしなくたって何時の間にか治ってた。
ごく普通に身の回りにいる細菌が悪さなんてしてなかったのだ。そして悪さどころか、これらがいたから“強毒の病原菌”から身を守れたともいえるのに。。。。
こんな事すら、忘れちゃうんだよね。人間って。(常在菌が病原菌に変身するのは、人の側の状態が変化するからだ。免疫不全状態にね。そして、人間は風邪をひいたくらいでは免疫不全にはならない・・・・。報道だけでなく資本主義経済と消費社会に医療、医学・薬学を馴染ませようとする事も事態を複雑にしている。。。おっと脱線)
というわけで、話をピロリ菌の除菌に戻すと、、、
ピロリ菌に感染しているヒトと感染していないヒト、この両者が存在しているわけだが、現在はピロリ菌に感染しているヒトのデメリットだけが強調されている。
だけど、ピロリ菌に感染していないヒトにとって、100:0 で有利なんて話があるんだろうか?ピロリ菌って、最近になって現れた菌なのだろうか?最近だとしたら進化に影響はしてないよなぁ・・・・・。
夏目漱石はピロリ菌保持者だったんだろうか・・・・。
まぁ、なんにしても、ピロリ菌がいても“なんでもない人(病気じゃない人)”まで除菌する事はないのは言うまでもないだろう。必要なのは“病気で辛い人”に限るべきだ。
遺伝子型と臨床像を結びつけるのは・・・・・、難しいのだから。
そして、ピロリ菌保菌者のうち発病しない人の遺伝子プロフィール・・・・これが気になるのは、私だけではないはず。。。。CagA が全ての人の胃粘膜細胞の細胞周期に影響を与えるのか?与えないとすれば、その多型が発症するしないの分水嶺なのか?そもそも、多型が存在するのは何故なのか?与えるなら、何が決め手なのか?そもそも、分水嶺が一つもしくは、少数の遺伝子で説明できるのか????