非常に難しい質問です。何を以って効くとするのか、、、、『効きます』と答える側と『効くのですか?』と質問する側、特に質問する側が患者であった場合は、間違いなく、答える側と想定しているレベルに食い違いはあるだろうなぁ。
例えば、『5日間の発熱が3~4日間に短縮する』という事を“効く”とするなら、タミフルは効くということになるだろう。
ただ、『効くのですか?』とわざわざ聞くときは、重症化して死んでしまう場合にも『効くのか?』という事を知りたいはずだ。
現在、わかっていることを書き出してみると。。。。。
タミフルは「インフルエンザ脳症」(インフルエンザの重症化)を予防しない。
インフルエンザウイルスの“強弱”とは関係なしに重症化する場合は、サイトカインストームによるものであり、タミフルやリレンザなどノイラミニダーゼ阻害剤は、単に増殖したインフルエンザウイルスが細胞から離れるのを阻害するだけだから、病院にいって、タミフルを処方してもらう段階、すなわち、検査してインフルエンザウイルスの存在が判明する段階では、すでに病態形成が進行しているわけだ。
発熱をみてからタミフルを服用する頃には、軽症例ではウイルス量は減少し始め、サイトカインストームが生じるような例では、すでに病態形成が進行しる。
いずれにしても、病勢の減退や進行に、タミフルは影響を与えない。軽症の場合楽にはなるけど。
よって、インフルエンザウイルスの“強弱”とは関係なしに重症化する場合は、タミフルは『効かない』と言う事になる。
では、強毒性のウイルスだった場合は、タミフルは効くのか?
まず、その前にちょっと前に香港で流行したH5N1型鳥インフルエンザウイルスの毒性のパターンを見てみると、、、
このウイルスは、通常のインフルエンザウイルスと異なり、インターフェロンやTNF-αの抗ウイルス作用に対して耐性を有していることが確認されている。これも、強毒性といって差し支えないだろう。だけど、人から人への感染力が少ないから、公衆衛生学的には脅威ではない。個人的には脅威ではある。だから、この場合は罹患の確率の問題で『怖くない』という感覚になる。罹患するけど重症化しないし・・という『怖くない』ではない。
新聞等でもご存知のことと思うが、インフルエンザウイルスが人の細胞に吸着するために使う鍵のようなものが、HA(ヘムアグルチニン)で、これには16種類が知られている。一つの細胞に入り込んで増殖し、その細胞から脱出し他の細胞へ向かう為の鍵のようなものが NA(ノイラミニダーゼ)で、これには9種類が発見されている。
ヒトに感染する HA は H1~H3、NAはN1とN2が確認されている。
鳥のH5は特別な例外を除いてヒトには通常感染しない。
ちなみに、鳥に感染する H1 のウイルスはヒトには原則的には感染しないといわれている。この為、今回の騒動が起きたものと思われる。(基本的に、なんで騒ぐのかわからないし、マスコミのネタだと思うが・・・・)
その理由は、HA(ヘムアグルチニン)の鍵穴(錠前とでもしておく)であるシアル酸(SA)が鳥とヒトのでは立体異性体の関係にあり、鍵穴(受容体:galactose)への結合方法が異なるためである。そのため、一部の例外を除いて原則的に相互に感染しない。
ただし、症状が出ないすなわち不顕性感染はありえる。結合が少ないので病気の程度が軽いというわけだ。空港でチェックしても意味が無いのも、冷静に考えれば事前に判ること。
で、このインターフェロンやTNF-α耐性は、NS1遺伝子が関与していると考えられる。ということは、宿主(この場合ヒト)の持っている自然の抗ウイルス作用が全く働かず、ウイルスの増殖速度は、とっても速い・・・・・・。
当時、香港ではタミフルを2倍飲んでも、、、効かなかった。。。。と報告があった。
もう一つの、いわゆる典型的な『インフルエンザウイルスの強毒株と弱毒株』--Q&A-- にある強毒性の場合、人から人への感染力が多い、少ないは、この変異が規定するわけではない(?)。(シアル酸認識部位じゃないんだから・・・でいいんだよね??)
だから、理論的にはウイルスの量を減らせる、すなわち新たな細胞に吸着して進入する事を阻止できれば、病態形成の進行を食い止められそうである。
ただし、このタイプの強毒性ウイルスが感染後、発熱などの症状が出のまでの間に、全身の細胞に到っていれば、「効かない」ということになる。この辺がどうなのか、私にはわからない。
まだ、他にも書いておかねばならないこともありそうだけど、、、まぁ、いいかっ!夜も更けてしまったし、明日は娘と遊ぶ約束をしているし、さっさと、、、、、
というわけで、次に、ワクチンだが、、、、ふわぁ~、頭がぼぉ~と、してきてる、、、これじゃ続けらんない、、、、、。
というわけで、ワクチンに付いては、明日か明後日か、、その内、思いつくままに書くことにする。
ワクチンが予防効果があるのか無いのか、これも色々な要素があって、一言では言えない。
要は、このエントリーの目的は、インフルエンザ騒動を機に、自分の頭の整理、、、、、それと、ここ【マリンパの雑感】を読んでくださる方が、マスコミの単純で安直な“決め付け(誘導)”に流されないために、、、、、わけわかんなくさせ、、、、さらに不安に陥れる・・・・・・・・・・って事なのか・・・・
(。_゜)☆\(ーー;)バキッ
って、冗談はさておき、次回までに、下の引用でも読んで、暇を潰しておいてくだされ。
免疫:生涯働き続けるインフルエンザ抗体Nature vol.455 (7212), (Sep 2008)
1918年のH1N1型インフルエンザの世界的大流行を生き延びた人たちの血液から、このインフルエンザウイルスのタンパク質に対する中和抗体が単離され、免疫応答の持続性についての新しい基準が得られた。
血液標品は、1918年当時2歳から12歳だった、現在91歳から101歳の生存者32人から集められた。
すべての血液標品が最近再構築された1918年ウイルスに対して血清反応性を示し、また一部の標品からは、記憶B細胞を単離して、培養・増殖させることができた。
このB細胞は1918年ウイルスのタンパク質の1つに対する抗体を産生し、この抗体は1918年ウイルスの致死性感染からマウスを防御した。
このことは、1918年のウイルスに似た新興ウイルスの治療にこのような抗体が有用である可能性を示唆している。
Letters to Nature p.532
インフルエンザとの戦い(Fighting Flu)Science April 10 2009, Vol.323
現在のほとんどのインフルエンザのワクチンは、主要表面抗原の赤血球凝集素(HA=antigen hemagglutinin)上の超可変領域(hypervariable regions)を標的として抗体を誘発し、特定のインフルエンザ系統と宿主細胞の結合を妨害する。
最近になって、もっと広範に有効な中和抗体が報告されたが、これによってもっと一般的な治療法が可能になるかも知れない。
今回、Ekiert たち (p. 246, および、2月26日の電子版も参照)は、中和スペクトルの広いヒト抗体CR6261が2つの異なるHAと複合体を形成している抗原結合領域の結晶構造を決定した。
2つのHAとは、1918インフルエンザウイルス、他の1つはH5N1トリインフルエンザウイルスである。
結晶構造から、中和のメカニズムが明らかになった。このような結合エピトープ(抗原決定基)を分子レベルで理解することによって、ワクチンや薬剤の設計方針の助けになるであろう。
Antibody Recognition of a Highly Conserved Influenza Virus Epitope
p. 246-251.