原罪(げんざい、羅: peccatum originale)とはエデンの園において人類の始祖であるアダムとイヴが最初に犯したとされる罪、およびその罪が人間の本性を損ね、あるいは変えてしまったため、以来人間は神の救い・助けなしには克服し得ない罪への傾きを持つことになったという、キリスト教の多くの教派において共有される思想。
・・・・旧約聖書に書いてある(あるのか?私は読んだ事ないからなぁ)リンゴを食べちゃったエピソードの事だが、免疫現象にも、これと似たような現象がある為、免疫学では古くから言われている言葉である。
・・・・ってゆーか、免疫現象自体が、生命現象そのものである為、現在でもわからない部分の方が多い。その為の、わからないなりの説明とも言えるのだが・・・・。
上、ちょっと抽象的なんで、言葉を変えると、、、、現在の生命科学は、試験管の中では、きっちりとロジカルに現象を説明でき、また、再現性もあるのだけれど、いざ、そのロジックを“生身の人間”に適用すると、なんだが・・・・・思ったようにならない・・・・。
という事である。
だから、臨床は100%にならない。個人差を差し引いても・・・である。
その現象の理解が理論的に正しかったとしても個人差があるわけだが、その理論そのものが、100%に至ってない、あるいは部分的にしか解明されていないが故、間違っているということもあるわけだからね。
がんの免疫学的な治療法が、占い並みの有効率なのも、そういうことだ。
ちなみに、弱毒性のインフルエンザスイルスでさえも死んでしまう人がいると言う事が、免疫学的な個人差によっている例になるだろうか!また、強毒性のウイルスに感染しても死なない人もいるわけで、これも、免疫学的な個人差と言える。サイトカインストームを起こして死んでしまう感染症のパターンには、その原因がスーパー抗原である場合と免疫学的な個性である場合があるが、インフルエンザの場合は人間の側の個性が問題ってことはわかっている。。。。。。(のかな!?)
何で平等じゃないんだ?
って質問には、平等だったら、今頃、地球上に人類はいないと答えておこう。インフルエンザに対するデメリットは他のウイルス感染にはメリットになるかもしれないという事を、ココでは気づいておいてもらう事にして、、、、、
さて、本題。前回の続き。
インフルエンザワクチンは効果があるのか?
これも、うまくいった場合には、期待通りの効果が得られるけれど、いつも、期待通りに行くとは限らない。
言葉を変えると、現代医学は、100人中100人に対して、理論的な結果を誘導できるほど、生命現象を理解していないということになる。
そして、その不確実性は、現在、判っている範囲で、ウイルスの特性、疫学の事実や抗原原罪説等で説明されている。
まず、一つ目。インフルエンザウイルスは、抗原性を変異させながら免疫を逃れているウイルスのひとつであるということ。だから、流行すると思われる株を想定して毎年接種しているワケだが、、、、
何故か、人間は、この変異の激しい部分に対して、反応する(抗体を作ろうとする)んだよねぇ!!
前回示した Science April 10 2009, Vol.323『インフルエンザとの戦い(Fighting Flu)』のように、変異の少ない部分に対して抗体を産生できるようになれば、詳しい生命現象を知らなくても、期待する結果を得る事が出来るようになるんだけど、、、
で、インフルエンザウイルスの変異率の高さは、RNA ポリメラーゼが“低性能”である為に、1000塩基に一つの割合で複製ミスを犯すところから来ているといわれている。遺伝子変異率から見るとインフルエンザの一年はヒトの百万年分に匹敵するとも言われているくらいだから、その凄さがかわるだろう。なんたって人類は、二百万年前に地球上に誕生したんだからね。
一回の予防接種で一生免疫が得られる“麻疹”や“日本脳炎”の原因ウイルスが、どれ位の変異率なのかは、調べた事はないけれど、人体が、ほとんど変異しない部分に対応するのなら、一回で生涯の免疫が得られるのである。
二つ目。インフルエンザワクチンを接種すると、確実に抗体産生を誘導できるのか?という現実がある。
疫学の事実として、ワクチン株に対する抗体の上昇率は低いと言われている。2回接種するのはその為なのだが(近年では、成人は1回で済ましている事が多いが)、、、、それに、高齢者の場合は、胸腺がない事(だから、ポリクローナルにプライミングされた状態にある)も大いに関係しているのだろうけど、特異的な上昇率は低い。
それと毎年の流行を予測しているわけだが、その予測の確認はフェレットでやっているんだよねぇ。知ってたぁ?フェレットだよ、フェレット!!そののデータをヒトに当てはめてるんだよねぇ・・・・・・・。まぁ、他に方法がないならショウガナイけど、、、、それに、的中したとして、その量で臨床的な効果が得られるのか???(理論的には完璧ながん免疫療法が効かない理由のひとつには、これと同じパターンが考えられる?)
そんなこんなで、インフルエンザに罹患しなかったのが、本当にワクチンのおかげなのかどうか、、、、、、私自身、予防接種を受けるようになったのは、子供が出来てからなんだけど、それ以前は、罹患していたかと言うと、記憶にないんだよねぇ。
私自身の免疫学的個性により、ウイルス感染しても症状が出ない体質だとしたら、ウイルスの運び屋になってしまう。家族に染すのを防ぐ意味で、予防接種をしてるというのが、目下の理由なのだが、、、、
三つ目。現在のワクチン投与経路の問題。
現在のインフルエンザワクチンは、その投与方法が筋注だ。その為、人体は胸腺依存性抗原として処理する。その結果、産生される抗体は IgG クラスだ。
この抗体は、病原体感染の最前線で活躍できる抗体ではない。
消化管の免疫を見れば、一目瞭然なのだが、100兆個を越える微生物に曝されながら、これを、ほぼ、完璧なまで消化管内で食い止めているのは、何を隠そう、IgA クラスの抗体が分泌されているおかげなのだ。
粘膜から粘液中に放出され、免疫グロブン全体の8割を超える割合で産生されている、感染防御の専門家が IgA クラスの抗体だと言える。
では、IgG クラスは何をやっているのか?
最前線をかいくぐって人体内に侵入したウイルスを、免疫系を総動員して排除するために活躍している。いってみれば、感染後の重症化を防止するという役割で考えるのが適当なのである。最近は、この辺を理解している人も増えたみたいだが。。。。「発病しないではなく、発病しても軽い」って、患者さん自らが言っている事を耳にする機会が増えたもんねぇ。
インフルエンザウイルスの感染部位は“気道粘膜”なのだから、気道粘膜で分泌型 IgA クラスの抗体産生を誘導できるワクチン投与が理想的なのだが、、、、何故か、今まで、なかったんだよねぇ。
米国では、CDCのホームページで、経鼻ワクチン Flumist のQ&Aがあるから、発売されているみたいだけど。。。。
臨床的な効果があると仮定して(among children aged 15-85 months にはスゲー良いみたいだけど、大人では???みたいだから)、経鼻ワクチンと筋注のワクチンの併用が、私的には一番だと思うのだが、対費用効果を考えれば、経鼻ワクチンに分があるのは論を待たないだろう。強毒性ウイルスじゃない限りねっ!!
四つ目。これが、冒頭に書いた“抗原原罪”が関与する部分だ。
ワクチン接種後の抗体の上昇は、もちろんワクチン株に対して反応したものである。これは、疑いのない事実である。
だが、その誘導された抗体が感染を阻止する抗体として働くかどうか?という疑問は残されたままなのだ。
結局、フェレットとヒトは違うよ!ってところにも関係してくると思うんだけど、抗原としてワクチンを投与しても、期待する抗体が選択されない・・・・・。
抗原と抗体は、鍵と鍵穴の関係。フェレットで予測は的中したと確認されても、人体で作られる抗体が、鍵と鍵穴の関係とは、微妙に違ってしまう・・・・・。
抗原原罪1.概念
免疫系の正常な働きによって抗体やエフェクターT細胞が獲得されると、それらは同じ抗原に対して反応するナイーブリンパ球が活性化されるのを抑制する。
これは抗原にさらされていない個体に特異抗体やエフェクターT細胞を移入することで観察される。
既に免疫されている個体に特異抗原を投与してもナイーブB細胞は反応を示さないが、他の抗原には正常に反応する。
2.現象
“原罪”とはアダムとイブに象徴される人間が生涯負わされる罪(sin)のことである。アダムとイブの冒した罪をじっくり考える暇もないほどめまぐるしく移り変わる今の世の中で、免疫学で呼ばれている“抗原原罪”という現象はワクチン研究者にとって大きな重荷になっている。
この現象は最初に受けた強い印象がいつまでも記憶されるように、工夫を凝らして作った型の数々のワクチンをいく度接種しても産生される抗体の多くは最初に接種したワクチンの型に対するものである。
事実この現象はインフルエンザウイルス、デングウイルス、マラリアなどで認められている。
病原体に感染するとナイーブT細胞によって免疫応答が開始され、病原体の排除のためエフェクターT、B細胞(障害性T細胞、形質細胞)が活性化し、病原体が駆逐されると記憶T、B細胞に再度の病原体の感染防御を託し死滅する。
同じ病原体が侵入すると記憶T、B細胞はナイーブT細胞の活性化を抑制し、ただちに免疫応答する。
しかし、インフルエンザウイルスなど初感染時から変異した病原体が感染すると、記憶T、B細胞は最初に免疫応答するはずのナイーブT細胞の活性化を抑制するので、最初に感染したウイルスの記憶に基づいたエフェクターT、B細胞を活性化させる。
その結果、最初のウイルスに存在した共通のエピトープだけに抗体が産生され二度目以降に感染したウイルスの変異したエピトープには抗体はあまり産生されない。
最初の記憶は消えないのである。
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ姿を変えて出現するので、感染するとまず初感染時の免疫記憶がよみがえるため、変異ウイルスは生き延びて新たな流行が拡大するのである。
ということで、予測バッチリのワクチン(抗原)を投与しても、それにバッチリと対応する型の免疫グロブリンが得られない事があるんだよねぇ、困った事に!!
免疫現象は、初感染なら、一からステップを踏んで行われる。しかし、コレでは現在進行形の感染に対応できない。時間的に間に合わない。その為、同じ病原体の次の襲撃に対処するため、その抗体を作るB細胞を長期に渡って、体内に残しておくように高等生物の免疫系は進化した。
通常のB細胞は、2週間から1ヶ月位の寿命なのだが、この記憶B細胞は、生涯、行き続けるらしい。前回、紹介した論文 Nature vol.455 (7212), (Sep 2008)『免疫:生涯働き続けるインフルエンザ抗体』を参照。
この記憶B細胞が体内にいるおかげで、2度目の時は、すばやく対応できる。インフルエンザの様な変異しやすいウイルス以外の場合は!
というわけなのだ。
抗体は、抗原とピッタリと合う型でないと役に立たない。
しかし、なまじ、以前に似たような経験をしていると、免疫系は“すばやく対応”を信条としているため、記憶B細胞で対応しようとしてしまう。。。。
くぅ~、泣けるねぇ!!
でも、多少は効くのかもしれない。理論的には効かないはずだけど、ちっょと効いてしまうのが、臨床だからねぇ!?
理論的には、立体異性体の関係にある鳥とヒトのシアル酸ではあるのだから、お互いに感染する事は無い筈なのに、感染するのも臨床だしねぇ!
試験管レベルの理論は、完璧なんだろうけどねぇ!
ということで、善良な市民を、益々、混乱させてしまうエントリーでした。