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医薬・生命科学 アーカイブ

2006年11月28日

DHA がアルツハイマー発症予防

20061128_cat_driver.jpgベニスの商人と聞いて、この商人=高利貸しのユダヤ人シャイロックだと、思い浮かべる人は多い。でも、答えは『ブッブー』である。ベニスの商人は、シャイロックに金を借りたアントーニオだ。(あっ、そうだよなぁって感じでしょ?)

これと同様に『DHA がアルツハイマー発症予防あり』と聞くと、瞬間的に“サプリメントとしての DHA”だと頭に浮かぶ人が、ほとんどだと思う。
(“車は人が運転する”って思い込みがあるから、人はこの写真を可笑しく感じられる。何でおかしいの?って聞かれると、一瞬、答えにまごつく?)


そんな人の“思い込み”を指摘するかのような臨床試験を紹介しよう。(臨床試験は思い込みの指摘が目的じゃないけど、私は、それが目的♪)

Framingham Study:DHA高値は認知症リスク低下と関連

提供:Medscape

ドコサヘキサエン酸高値の人は、認知症とアルツハイマー病の発症リスクが有意に低いことを示唆する新規研究結果

Caroline Cassels
Medscape Medical News

【11月20日】ドコサヘキサエン酸(DHA)高値の人は、認知症とアルツハイマー病(AD)の発症リスクが有意に低いことを示唆する新規研究結果が報告された。

タフツ大学Jean Mayer USDA老化栄養研究センター(マサチューセッツ州ボストン)の研究者らは、DHAが最高レベルの人は、全ての原因の認知症の発症リスクが47%、ADの発症リスクが39%低いことを確認した。

「今回の研究では、DHA含量と魚の摂取に有意な相関が認められ、魚が食事によるDHAの重要な供給源であることが示された」と著者らは記している。

この研究は『Archives of Neurology』11月13日号に掲載されている。

Ernst Schaefer, MDらは、9年間の追跡調査によるプロスペクティブ(前向き)コホート研究を実施し、Framingham Heart Studyに参加していた899例の被験者を対象に、記入済みの食事質問票と血中DHA値を分析した。

神経心理学的な検査の結果、すべての試験参加者はベースライン時において認知症ではなかった。被験者はベースライン時以降、2年ごとにミニメンタルステート検査(MMSE)による認知機能検査を受けた。前回の検査成績からMMSEが3点以上減少した場合、該当する被験者を再び来院させ、神経学的および神経心理学的検査を実施した。

研究の長所

研究対象集団の36.5%は男性であり、平均年齢は76歳であった。血漿検体を採取し、脂肪酸のホスファチジルコリン(PC)の血漿含有量を測定した。また、患者488例の部分集団は、食事質問票に回答した。

試験期間中、899例中99例が認知症を発症し、これにはADの71例が含まれた。年齢、性別、血漿ホモシステイン値、アポリポ蛋白E4アレル、学歴について補正後、PC DHA値により被験者を4群に分けた。四分位数により最も高い群に含まれた被験者は、これより低い3群の被験者に比べて、全ての原因の認知症とADの発症リスクが有意に低かった、と著者らは報告した。

さらに、食事質問票に回答した参加者のうち、DHAが最も高い群では、DHAの1日摂取量が平均0.18gであり、魚を週に平均3回摂取していた、と著者らは報告している。

「本研究は、認知症およびアルツハイマー病の発現における血漿中PC DNA含量の予測値を評価した、初めてのプロスペクティブ(前向き)分析である。長所として、プロスペクティブ(前向き)デザインであること、長い追跡調査期間、標本サイズ、認知症と血漿中リン脂質脂肪酸含量の直接的関連の評価に加え、食事データを分析していることが挙げられる」と著者らは記している。


栄養補助食品にも保護効果あり?

今後の研究では、確立した認知症患者において、DHA栄養補助食品の併用によりさらなる精神機能の悪化が予防可能かどうかを主眼に検討する必要がある、と研究者らは指摘している。

本研究は「ヒト血漿中DHAを直接測定し、アルツハイマー病のリスク低下との関連を示した、最初のエビデンスである」と付随する論説でラッシュ大学医療センター(イリノイ州シカゴ)のMartha C. Morris, ScDは述べている。

1980年代および1990年代の研究では、DHAが若年時の学習能力と記憶に重要であることが明らかになった、とMorris博士は述べている。しかし、老化した脳におけるω-3脂肪酸の重要性が検討されるようになったのは最近のことである。

高齢者が食事でDHAをより多く摂取すれば、老化した脳のDHA濃度が高くなることが研究から示されているが、ω-3脂肪酸の栄養補助食品が認知症を予防するかどうかを最終的に判断するには、今後さらに研究が必要である、とMorris博士は指摘している。


Arch Neurol. 2006;63:1545-1550, 1527-1528.

Medscape Medical News 2006. (C) 2006 Medscape


※引用文中ほど「本研究は、認知症およびアルツハイマー病の発現における血漿中PC DNA含量の予測値を評価した、初めてのプロスペクティブ(前向き)分析である。」とあるが、血漿中PC DNA含量→血漿中PC DHA含量 と思われる。


結局、魚をたくさん食べていた人の方が、血漿中PC DHA含量が多く、アルツハイマーの発症率が低かったという結果から、DHA とアルツハイマーの因果関係を結論づけているのだが、もしかしたら、魚に含まれる他の成分の可能性もあるってことで、『栄養補助食品にも保護効果あり?』と言う事なのだろう。

このサプリメントで、結果が示せれば『DHA とアルツハイマーは因果関係あり』だと。


しかぁ~し、この試験では、“魚を食べる”を強制的にさせていたわけではない。自由意志による“魚の摂取”だ。とすると、当然、“好き嫌い”がある。

“魚を食べる事が好き”という“嗜好=遺伝子=脳の構造”そのものが“アルツハイマー耐性”だと言う事は言えないだろうか??(例えばアミロイドβが蓄積しづらい人は魚が好き・・・とか?)

サプリメントで試験を組む時は、自由摂取ではなく、ランダムに割り付けて欲しいものである。(でも、サプリメント代金は誰がだすんだろう?摂取する人が負担するとしたら、脱落しそうだよな!DHA サプリメントって高いもん。そして、結局、アルツハイマーに関心がある人だけが残る。これで得られるデータも、なんか偏ってそうだなぁ。。。。DHA サプリメントを無償で、これを売りたいメーカーが提供するにしても、きな臭くなるしなぁ・・・。)


それから、『若い世代でストレスが性生活にも影響』って調査結果だけど、、、

~性生活を中心としたライフスタイルの実態調査~

 先ごろ、20~40歳代各男性の性生活を中心としたライフスタイルの実態調査結果〔調査実施機関は電通サドラー・アンド・へネシー(株)〕が示され、“若者の性機能の低下”、“元気のない20歳代、30歳代”という実態が浮き彫りになった。


ストレスありは全体で85.3%

 今回の性生活を中心としたライフスタイルの実態調査は、現在、性的なパートナー(異性)がいる20歳代、30歳代、40歳代の首都圏在住の男性1,500人(各500人)を対象に、インターネットを利用して行われた。

 質問の33項目は、「喫煙・飲酒習慣の有無」、「現在の心理的状況」、「ストレスの度合いや原因」などの一般的なライフスタイルと「現在の性生活への満足度」、「勃起不全(ED)低下に関する認識」などの性のライフスタイルから成る。

 その結果、イライラする頻度が「ほとんどない」と回答していたのは全体でわずか17.5%、ストレスが「多少ある」、「非常にある」は85.3%で、ストレスの原因として「仕事/上司」が85.5%を占めていた。

 一方、性のライフスタイルに関する項目については、性機能の低下を自覚していた人は全体で38.3%(30歳代37.8%、20歳代27.4%)、実際に低下し始めた年齢は平均33.6歳と回答していた。しかし、ED治療経験者は全体の1.1%にすぎず、受診未経験者で受診を希望していたのは15.1%(20歳代16.4%、30歳代14.8%、40歳代14.1%)であった。

 日本性機能学会の定義に基づく「セックスレス」が認められたのは20歳代16.0%、30歳代28.4%、40歳代38.4%であった。


調査結果はED診療現場と類似

 同調査結果について、実地臨床医からの見解として浜松町第一クリニック(東京都)の竹越昭彦院長は「今回の調査結果は仕事のストレスが原因で軽いうつ状態になり、EDを来し、来院するケースの割合が高いという診療現場と非常に似ている」とコメントを寄せた。

 また、性機能の低下を認識している人の割合が全体で38.3%であったにもかかわらず、EDを自覚していた人の割合は9.7%で、実際に治療を受けた人はわずか1.1%であったことに着目。いまだにEDをはじめとする性機能の低下や治療についての情報が普及していない状況を指摘し、同院長は「今後、これらの普及は、われわれ医師の課題であるとあらためて認識した」と述べた。

これも、そう。

事が起きると、何かに原因を求めたい人間の心理を巧みに利用している?っていうか、『原因はストレスですね』というと、ほとんどの人が納得するというもの。

現代人は“ストレス”と“アレルギー”と説明されれば、ほとんど納得してくれる。

現代の日本において、セックスが少なくなっている原因は“ストレスだ”っていうのは、間違いじゃないけど、考えられる原因全てを示しているのか?っていうと、そうじゃない。

それに、こういう結果と“ストレス”を断定的に結び付けると、『ストレスは人間にとって“悪い”ものだ』っていう間違った認識を広める事にもなる。ストレスがなければ、細胞の成長は期待できず、システムとしての人の機能も成熟しない。精神的ストレスがなければ、精神的な成長は為されないのにね。『じゃ、精神的ストレスが苦になって、病気になったり、自殺しちゃうのは、どう説明するんだよ?』って声が聞えてきそうだけど、ストレスの感受性って、個人差が大きい。


お次は『原因をなるべく単純化したい』『何故なら、知らない人に納得くさせるのに、理由は単純なほど効果的だから』という、良い例を示そう。

ANN INTERN MED に掲載されている『冠動脈疾患合併患者は拡張期血圧下げ過ぎに注意』って論文。(タイトルが内容を示しているので引用はしない)

いわゆる、血圧のJカーブ現象だ。『何がなんでも、血圧は低い方が良い』って論文も多い事を背景に、このJカーブ現象のデータを疑問視する人がいるのだ。

『何がなんでも、血圧は低い方が良い』は、動脈硬化にとってみれば当たり前だ。動脈硬化の原因としてメニカルストレスは神経・液性因子と原因を二分する原因の一つだからだ。でも、血圧はからだの隅々まで血液を送り届ける為には、大事な因子だ。二律背反なのだ。生きていく上で『酸素が絶対必要だけど、過酸化物を生成し悪影響をも及ぼす』のと同じようにね。このネタでブラック・ユーモアを作るとすれば、《血圧を出来るだけ下げたおかけで、動脈硬化の恐れから解放されました。今後一切動脈硬化の心配はありません。死んでますから。》ってところかな。

『血圧は低ければ低い程が良い』ではなく、メカニカルストレスが動脈硬化を起こす経路を断ち切れれば、血圧は高くても“気にしない”ことになるのにね。(良く、血圧をゴムホースの内圧に喩える人がいるけど、あれが、“誤解”の基。血管は生きているから、圧力というストレスが加わっても劣化しない事も可能だということに気づいて欲しい。ベニスの商人はアントーニオなのだ。)


■ベニスの商人はユダヤ人の高利貸シャイロック
■DHA は認知症に効く
■ストレスは悪者だ
■高血圧は悪者だ


なんか、どれも、良く似ているような気がする。

なんとなく形成されてしまって蔓延しているコンセンサス(都市伝説?)って、怖い。それを検証しようとする事を忘れてしまいそうになる上に、その伝説を“補強”しようと、臨床試験を組んじゃったりしちゃう。
 
 
 
BTJ ジャーナル創刊号での理研の林崎氏と東大菅野教授の対談や、今月23日付の英科学誌 Nature に発表された『遺伝子の数すら個人差がある』を見ればわかる通り、今まであった遺伝子の概念と実際の存在状態は、かなりかけ離れていて、今、それが徐々にベールを剥がされようとしていると言える。


だから“個の医療”なのだ。


人間一人一人は、外界からのストレスに対する反応が違うのは当然なのだ。HIV ですら、AIDS 発症に個人差があると、その23日付の Nature に記されている通り、多様性を持つ事が、進化の過程で種を存続させる“力”となっているのだから。

でも、これって不思議だ。人間の体は HIV を知らなかった筈なのに、ちゃんと対応する“体質”を用意している。なんだか、免疫のレパートリーの多様性を見ているようだ。免疫系も、まだ見ぬ敵に対する抗体を“無制限”に用意できる能力があるんだからね。

まるで、遺伝子再構成に働く RAG や体細胞変異まで積極的にやって多様性を得ている抗体産生細胞などを見ているようだ。
 
 
 
遺伝子が発現すれば、それはとりもなおさず表現型に現れる訳だけど、(tRNA や rRNA は別にして)転写された RNA がすべて蛋白質の設計図かというと、最近では、そうではない。古典的なセントラルドグマではそうだったけど、現在では non-cording RNA が生命現象に於いて多彩な機能を発揮している事が解ってきて、全てが蛋白質に翻訳されない事が解ってきたからだ。(実態は、昔からそうだったんだけど、昔はそれを知らなかったから。)

この、RNA が単独で生命現象に影響を与えているのって、なにも、ヒト細胞の DNA が転写されて出来た RNA だけの話じゃないだろう。

例えば、生体に侵入したウイルスは、免疫系に粉々にされ、飛びっ散った RNA は普遍的な酵素である RNase で分解される訳だ。この分解された断片が、なにかしらの機能を持った“形”に、偶然、なったとしてもおかしくはない。(当然、Dicer で切られる miRNA も含む)

だとしたら、感染症が、ヒトの色々な病気の引鉄を引くのが理解できる。脳に達すれば、精神機能にも影響を与えるだろう。セックスしなくなってもおかしくはないわけだ。

そして、地球上にある、今までは人の踏み込めなかった領域にまで、人は到達できるようになった。当然、そこには、人が存在しない形で微生物の生態系が作られていた筈だが、その中に人間が自ら足を踏み入れれば、人間の体内での遺伝子発現に影響を与え、今まで考えられなかった影響が出てくるのは、想像に難くない。(メタゲノム)

今年の夏に、複数のグループから発表された piwi 蛋白質結合 RNA(piRNA)が、精子の形成に関与しているって言うし(感染症と関係有るかどうかなんてわかんないけど)、蛋白質に翻訳されない RNA が凄い事になっているわけだ。(あっ、これはセックスしても“不妊”になる場合のネタかぁ!どっちにしても少子化に RNA が関わっている・・・と。)

産業や社会のインフラが日々撒き散らしている“化学物質”だって、影響が無い訳がない。
 
 
 
今『シェイクスピアの驚異の成功物語』を読んでいるせいで、そんな事を考えてしまうのだ。

その著者 Stephen Greenblatt 氏は、当時起こった事件や事故、行政や司法、文化などなど、細かい考察を重ね、シェイクスピア戯曲のテクニックを解きほぐしているのだが、【ベニスの商人】では、当時のイギリス人(ヨーロッパ人)のユダヤ人感を巧みに利用していると指摘している。(面白いだけじゃなく、印象強く、心に残る。話のプロット自体は、盗作?まがいなのに、シェイクスピアにかかると、まるで、別の印象だと、だれしもが言っているように。)

私には、そんな文学を考察出来る能力は無いから、せめて、医学関連の“都市伝説?”をこうして考察して楽しんでいるわけだ。

2006年11月22日

ウイルスの変異とヒトの変異?

20061122_Marlboro.jpgぜんぜん、関係のない話から入るけど、イギリスでは、風邪に対して抗生物質の使用禁止を大々的にキャンペーンしちゃったように、今度は、ジャンク・フード(ファスト・フード)のテレビコマーシャルの放送を期間限定で、全面禁止にしたそうだ。

こんなことって、日本では、絶対出来そうもないんだけど、どうして、こうも違うんだろう??もちろん、イギリス人と日本人の“考え方のキー”となる遺伝子が違うんだろうけど、それは、いったい何処なんだろう。(っていうか、一遺伝子で決定される形質じゃなさそうだから、解明はすげぇ難しそうだけと・・・)

ジャンクフードのCM規制 英、肥満が社会問題に

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2006年11月20日】


 【ロンドン17日共同】英国の放送・通信を監督する独立機関、情報通信庁(OFCOM)は17日、脂肪分などを多く含むハンバーガーなど「ジャンクフード」について、16歳未満を対象とした番組でのテレビCMを来年1月末までに全面禁止にすると発表した。

 英国では2歳から15歳までの肥満が大きな社会問題になっており、「ジャンクフード」を多用していると批判された学校給食の改善策も実施されている。

 脂肪分、塩分、糖分が、食品基準庁(FSA)が定める一定の基準を上回った食品は、16歳未満を対象にした番組で、一切広告を流すことができなくなる。それ以外を対象とした番組でも、16歳未満の多くが見る可能性がある場合は同様に規制の対象となる。


で、遺伝子が変化するには、いろんな影響(因子)があるのは、ご存知だと思う。一般の方にもお馴染みなのは、紫外線や放射能かな!?突然変異っていわれる現象も、同じことなんだけど、日本人がイギリス人の“気質”になるには、一体、どれくらいの変化が必要なんだろう。

ヒトのように有性生殖を行う生物は、この配偶子を形成する段階(減数分裂)で、遺伝子をシャッフルして、遺伝的多様性を作り出している訳だけど、これが突然変異を起こさせるには、一番大きな原動力になっている。っていうか、生殖細胞に変化が起こらなければ、その変化は種に定着しない。そして、紫外線だとか、化学物質による DNA の変化なんてのは、微々たるものだ。(病気になる方が多い)

遺伝子の変化といえば、有性生殖をしない生物、ウイルスなどは、どうやって多様性を産み出しているのかといえば、DNA 或は RNA 複写する(自分をコピーする)ポリメラーゼという酵素の“不正確さ”を利用している。もっとも、この時期流行のインフルエンザウイルスのように、ヒトを宿主にするウイルスとトリを宿主にするウイルスの共通宿主であるブタで、混合感染でのウイルス粒子形成時の8本のRNPユニットのシャッフルなんてのもあるが・・・・。

で、このポリメラーゼの“不正確さ”、インフルエンザの場合は1万塩基に1回って言われている。

ってことは、1個のウイルスが細胞に侵入して1万個の子ウイルスを作ったなら、その1個1個のウイルスのどこか一個の塩基が違っている、逆に言えば、親から産まれた子ウイルスは1万個に1個の割合でしか同じウイルスは産まれないって事。

例えば、トリの H5N1 とヒトの H1N1 の塩基配列の違いは一ヶ所どころじゃなく膨大で、その差が“亜型”になっている訳だけど、言ってみれば、これの差が“日本人”と“イギリス人”の差だとしたら、日本人が日本人どおしで“交配”を続けても、ほぼ、“イギリス人”になる事は不可能・・・・・・。

細かい所をみれば、同じ日本人でも、全ての塩基配列が同じなのは1卵生双生児を除いてはないわけだから、別に、インフルエンザウイルスが同じ亜型に属していても、同じ塩基配列じゃないのは、驚くに値しない(かな?)。

同じ亜型のインフルエンザウイルスでも、例えば H1N1 のように一ヶ所違うだけで、スペイン風邪のように強毒性のウイルスになるように、日本人でも一ヶ所違うだけで、幼女に偏執する“強毒”な犯罪者が生まれるのも似ている。(犯罪者と遺伝子を結び付けるって、マズイ?)

結局、毎年流行るインフルエンザに対して、毎年違うワクチンを打つのは、亜型が違うからだけど、エピトープとなる部分が一塩基変化した為に、ワクチンが効かないって事も考えられる訳だ。(もっとも、ポリクローナルな抗体が産生されるから、確率は低いけどね)

このウイルスのポリメラーゼの不正確さに起因する子ウイルスの変化で、知っておかなければならないのは、ポリメラーゼのミス転写は、まったく偶然だってことだろう。ほぼ、同じ弱毒のウイルスに感染した二人の体内では、ひとりは弱毒のウイルスが増殖し、数日の後、免疫系に排除され治癒するってこともあるし、もう一人は、運悪く強毒化したウイルスが生まれてしまって、みるみるうち命を落してしまう・・・・。って事もある。
 
 
 
個々人の遺伝子の変化で、『ジャンクフードのCM規制』を善しとする人が生まれる可能性は、日本人においても、可能性は大いにあるのだろう。

でも、これが“社会的なコンセンサス”を得られないのなら、それは“日本人の考え方”が変わったとは言えない訳だ。“善し”と感じても「伝統があるからなぁ」ってのもあるし。


・・・・・難しい。何が難しいのか良くわかんなくなってきたけど、難しい・・・。

個体の表現型の他に、人間の場合は“民主主義”のような“全体のコンセンサス”も“表現型”として扱わなきゃならない・・・・・・から??

じゃ、民族っていうか、その国の考え方って、どのように決まるんだろう???

とすると、やっぱり政治???環境からの圧力?神の見えざる手?

風邪には抗生物質を使わない方が良いのはわかっているけれど、製薬会社に勤めて給料を貰っている身としては、、、はたまた、私自身も、抗生物質が使われなければ、売り上げダウン・・・・。


でも、『ジャンクフードのCM規制』はやって欲しいなぁ。それから、タバコのCM規制もね。F1 の世界だって、国によっちゃ車体にタバコメーカーの広告を入れられないんだから、日本だって出来ない筈がない・・・。って、子供の頃からマルボロのロゴの入った F1 マシーンに憧れていた、今日この頃の私でした。

2006年11月20日

セックスは高くつく?

20061120_penguin.jpg最近の京都嵐山に生息する120匹のサルの一群の観察研究(レスブリッジ大学:カナダ・アルバータで心理学を研究するPaul Vasey)によると、サルにおいてもヒトと同じように、子供をもつためではなく、性的満足や社会的満足のために配偶相手を選んで、一時的に共同生活することが認められているという。

で、非常に興味深い事に、このニホンザルのメス達は、異性よりも同性との短期的な関係を好む傾向があるらしい。
(写真はメスとのセックスにあぶれて慰め合うオスペンギン・・・ウソです。)


これが、何を意味するのか?


さて、ヒトのオスはメスとのセックスの為に、花束、豪勢な一夜の演出したりと、涙ぐましい。子供が出きれば養育費や学費、他のメスとのセックスがバレレば、これだけでは済まず慰謝料と離婚すれば他人になった筈のメスの生活費まで面倒見なくてはならない。

メスはセックスによって命を落としたりする事もあるわけで、妊娠させられる危険を回避できるのなら、オスとセックスはしたくない。

極端な話、これが行き過ぎれば 1つの生物種全体が絶滅する可能性もある訳だ。


こんなデメリットがあるにもかかわらず、生物が進化の過程で有性生殖を進化させたのは、多様性という秘密の武器に投資し、将来において環境が変化した時にその武器を使って一気に優位に立とうとの意図であることは、明白である。(って言っても、進化はそんな”脳”を使って戦略的、意図的に為された訳じゃないんだけど、意味付けした方が面白いからね・・・。)


このオスとメスの関係で、もっと小さな方向に目を向けてみると、ダニのオスを遺伝学的に恵まれないメスに変えてしまう細菌がいるという。

すべての動物には、染色体のバックアップ用コピーが1つ以上あると考えられてきたのだが、このメスしかいないダニの一種には、染色体が一式しかないことが判明したのだ。要するに1倍体なのだ。

で、Brevipalpus phoenicis というダニにメスしかいないのは、オスをメスに変える細菌のせいでなのである。これによりB. phoenicis はオスなしで生息できるようになり、その結果として無性生殖種が既存の有性生殖種より多くなってしまったと推測されているのだ。

じゃ、ヒトでは?

メスしか子宮が無いのだから、子供はメスしか作れない。

今までは、オスがいないと、すなわち精子が無いと子供は作れなかった訳だが、生殖技術(ES細胞・クローン胚研究も含む)が進めば、メスだけでヒトは、、、、ヒトでも有性生殖が無性生殖に凌駕される時がくるのか??
 
 
 
昨日は、雨降りだった事もあって起床時間がいつもより遅くなり、子供と外で遊べなかったせいもあり、めずらしく、サンデープロジェクトを見た。そしたら、『許されるのか?代理出産』って、徹底討論ってやっていたので、見入ってしまった。

枝野 幸男(民主党衆議院議員)
蓮  舫 (民主党参議院議員)
根津 八紘(諏訪マタニティクリニック院長)
吉村 泰典(日本産科婦人科学会 倫理委員会委員長)

根津氏の言う事は、全くその通りであり、私の大嫌いな民主党の枝野氏、蓮舫さんも、全くもって“当たり前”の事を言っていた。慶応大学医学部の教授で日本産科婦人科学会 倫理委員会委員長の肩書きを持つ吉村氏だけは、ちょっとかわいそうな立場だった。

枝野氏が『この問題は、政治家ごときがどうのこうの言えるものじゃない』、蓮舫さんも『賛成・反対を言葉には出来ない』と。

根津氏の圧巻は、『出産は命の危険もある。そんな事をさせて良いのか?』に対して『そもそも、ボランティアとは、自らのリスクを伴うものである。リスクを伴わないものはボランティアとは言わない』と。


---良い事言ってくれるぜ---

何時も、私が言い続けていた事と同じ事を“公の場”で言ってくれる人がいて、嬉しかった。『言葉だけのイイコブリッコはさっさと失せろ!!(ファッキュー!)』だ。


で、政府の見解は『世論にも“容認”する意見が見られるので、暫く様子を見ながら慎重に・・・』との事らしい。

これを“玉虫色”と言ってしまえばそれまでだが、私は、“玉虫色”ではなく、“当たり前”の事だと思う。っていうか、こんな事の取り決めをする事の方が間違っている。『神の領域』云々という言葉をよく聞くが、神にとっては“想定内”の筈で、プログラムされた生殖形態だと感じているからだ。ヒトがこういう事を始めるのは、時間の問題だと。イブが禁断のリンゴを食べた時から、こうなる事は、神にはわかっていたと。

こんなふうに、“生殖”というものを“弄る”のも、紫外線やポリメラーゼのミスで変異が生じるのも“大差無い”と言えそうだからだ。

だって、人間がどんなに“頑張って”色々な技術を駆使して、遺伝子を改変する事までしても、映画に出て来るような空を飛ぶスーパーマンは生まれないし、目からレーザー光線は発射できない。35億年もかけて淘汰されてきて、現状の地球環境には現状の人間の能力が最良である筈で、現環境で、ヒトに100mを5秒で駆け抜ける能力や上方に10mジャンプ出来る能力を与えても、壁に激突したりコンクリートに落下すれば死んじゃう。生まれてきたとしてもこの程度で、それ以上に遺伝子を弄り過ぎれば、多分、発生致死だしね。

だから、逆に言えば、どんな事をやっても“安全弁”はある。だから、神は想定していたというわけだ。


20061120_devilbaby.jpg重力に逆らって、映画スーパーマンのように空を飛べる“人間改造方法”を人間が見つけてしまったら、その時に『神は死んだ』となるのだろう。ニーチェは言葉を発するのを早まったというわけだ。もっとも、ニーチェは悪魔が『神は死んだ』というのを聞いたのであって、ニーチェが死んだと感じた訳じゃない?!アレっ?悪魔の声を聞いたのがニーチェだから、やっぱり、ニーチェが神が死んだって言ったのか・・?まぁ、ドウデモイイヤ!


人間様が考える“正常”=“男と女のセックス”が、人間以外の生物での“正常”ではない事は、明らかなのだから、ホモセクシャルの結婚を認めるのも、全く問題ないし、クローンで子供を作るのも問題ないんじゃないかな。

堅苦しいカトリック信者がみたら、卒倒しそうだよな、こんな考え方。

だから、この問題は、政治家だけじゃなく、生物学者、医学者はいうに及ばず、法学者、文学者や宗教学者やその実務家の人達と、一般人や何も考えていない人すら交えて、侃侃諤諤やれば良い。

そして、侃侃諤諤やってる時が、一番楽しい・・・・・って。

2006年11月17日

人の感染に重要な変異特定 鳥インフルウイルスで東大

20061117_Dracula.jpgはやいもので、今年もインフルエンザという言葉が、新聞やテレビニュースを賑わす季節がやってきた。そして、毎年、新聞やニュースの報道の在り方に疑問を感じるのだが、基本的に“ウイルス学 (Virology)”を理解していない人達が、報道に携わっているからなんだろうって事で、毎年、同じように憤ったりガッカリしたりと。。。。

この記事も同様だ。

人の感染に重要な変異特定 鳥インフルウイルスで東大

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2006年11月16日】

 通常は人に感染しにくい高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が、人の細胞に結合しやすくなるのに重要とみられる変異を、東京大医科学研究所の河岡義裕(かわおか・よしひろ)教授と山田晋弥(やまだ・しんや)研究員のグループが突き止め、16日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 この変異に加え、ウイルス増殖などに関する別の複数の変異が重なると、人の世界で大流行する新型インフルエンザに変わる恐れがあるという。

 今回の変異を持つウイルスは、数は少ないものの既にイラクなどで人から検出されており、河岡教授は「検出例の広がりを監視することで、新型の出現がどの程度近いか予測することができそうだ」としている。

 グループは、ウイルス表面に突き出ていて、細胞への感染のしやすさを決める「ヘマグルチニン(HA)」と呼ばれる糖タンパク質のアミノ酸の並び方を解析。182番目と192番目のアミノ酸が変異して置き換わると、先端の形が変わり、鳥だけでなく人の細胞にも結合しやすくなることを確かめた。

 死者が世界で4000万人以上とされる1918年のスペイン風邪など、過去に大流行したインフルエンザのウイルスでも、似たような変異が起きたと考えられている。

 大流行に至るには、人ののどや鼻の細胞で効率よく増殖するような別の変異が必要だが、河岡教授は「HAの変異が大流行に向けた重要なステップであることは間違いない」と話している。

この記事は、嘘はどこにも書いてない。でも、この記事を読んで『ふむふむ』と納得するとすれば、大抵の人がこうなんじゃないかな?
◎鳥の強毒性ウイルスである H5N1 は、人間にも強毒性である。
◎鳥からヒトへの感染を可能にする“変異”が解ったのであれば、インフルエンザパンデミックに対して何か対策が立てられる。(怖いものはなくなった)


本来“高病原性鳥インフルエンザウイルス”ってのも、おかしな話で、ウイルス学では、“病原性”と“毒性”は別物である。でも、いつの間にか“病原性”=“毒性”が定着してしまった感がある。

じぁ、“病原性”って何?

昔からウイルスは感染しても何の症状も出ないものから、症状を引き起こすものまで存在する事が知られ、例えば“肝炎を起こす”という特徴を“病原性がある”と言っていたわけだ。インフルエンザウイルスでは“気道の炎症”が“病原性”だ。そして、このように臓器特異性があるものが多い。

“毒性”はその“病原性”の強弱の事だ。
ウイルスの増殖の速度が速いとか、宿主細胞の“翻訳”を完全にストップしてしまうとか、免疫反応をより強力に誘導するとか、全身の臓器の細胞に親和性があるとか・・・。

これを踏まえて、鳥に対して強毒性を示す H5N1 は、どのような“仕組み”で強毒なのか?

それは、全身の細胞に感染できるという事で説明出来る“代物”である。(拙著Q&A『インフルエンザウイルスの強毒株と弱毒株』参照)

では、鳥での強毒の機序(塩基配列=アミノ酸のシーケンスによる全身の細胞への感染性)が、そのまま人間でも再現されるのか?
答えは『No』だ。もしくは、『わからない』。(Q&Aにも書いてある通り、鳥では全身性だったけど、この香港のケースではヒトでの全身性は証明されていない)

事実、スペイン風邪ウイルスは H1 型だし、全身の感染性を持っていたかどうかは、最近のリバースジェネティクスの手法から、否定的な結果が得られている。

記事中の【死者が世界で4000万人以上とされる1918年のスペイン風邪など、過去に大流行したインフルエンザのウイルスでも、似たような変異が起きたと考えられている。】は、あたかも、『ヒトに感染しづらいウイルスがヒトへの感染性を持つに至った変異により、パンデミックが惹起された』との誤解を招きかねない。

たしかに、スペイン風邪の原因ウイルスは、それまではヒトに感染しづらかったウイルスかも知れないが、ヒトに感染できるようになったからと言って、“病原性”があるかどうかと、その“毒性”が強いか弱いかの予測は出来ないのだ。ヒトに感染できなきゃ、病原性もへったくれも無いンだから、一つの原因ではあるのだが。

記事中の【大流行に至るには、人ののどや鼻の細胞で効率よく増殖するような別の変異が必要だが、河岡教授は「HAの変異が大流行に向けた重要なステップであることは間違いない」と話している。】の病原性、毒性には《別の変異が必要》が重要で、《重要なステップ》は「ヒトに感染できなきゃ、病原性もへったくれも無い」という意味で重要なのだ。

そして、鳥だろうが人間だろうが、その他のどの生物でも、《全身の細胞への感染性》は、“強毒”なのは説明の必要も無いが、全身性が無くても“強毒”な場合、すなわち致命的な場合があるというのは、劇症肝炎やスペイン風邪を見ればわかる通りだ。

肝臓が機能しなくなれば死ぬし、肺のガス交換が機能しなくなれば“窒息死”するという”分かり易い”理由だしね。


この時期(インフルエンザが流行る時期)になると H5N1 が一人歩きして、この H5N1 ウイルスさえ制御できればパンデミックは制御出来たも同然のような“誤解”がまかり通るので、毎年のように苦言を呈する事になる。

H5N1 だけに注意を集中するな!特別扱いするな!という事を毎年言ってるような気がする。

河岡教授らの発見は、Virology や life science の面からは、大変重要な発見だ。でも、これ以上でも以下でもない。一般の人が大変心配しているインフルエンザパンデミックを予測したり、制御出来る事とは、直接は繋がらないのだ。結果が偶然そうなることはあっても。

新聞やテレビニュースは、この二つを“くっ付けて”報道しないと、“面白くない”から、このように話を持っていきたいのだろうが、これは、大変な大間違いで、大きな誤解を与えている訳だ。H1 でも H2 でも H3 でも、もちろん、H5 でもどれがヒトで全身感染性の強毒性になってもおかしくないし、鳥で強毒でも、H5N1 がヒトで、弱毒の場合もあるのだ。

証券取り引きの世界では、《風説の流布》だけど、医学界ではナントいうんだろう。(誰も得しないから、ちょっと違うか?)
 
 
 
『センダイウイルス物語―日本発の知と』の半分ほどまで読み進んだ訳だが、私にとって、この辺の知識の整理に非常にも役立っている。偶然に読み始めた本だったし、ましてインフルエンザウイルスの事まで書いてあるとは知らなかったわけだが、読み始める時期が良かったのか悪かったのか?新聞記事の“不正確さ”に引っ掛かったのと、この本からのタイミングの良い刺激とが重なって、今回のエントリーになっている。

一昨日の時点で、以下のネタがあったので、書こうと思えば書けた“インフルエンザネタ”だったのだが、本日の【共同通信社】の記事の方が、突っ込みどころが満載だったって事かな。

nature medicine 10月号 Vol.12 No.10 / P.1203-1207

ヒトインフルエンザA(H5N1)の致死性は、高いウイルス量と高サイトカイン血症に関連する

Menno D de Jong1, Cameron P Simmons1, Tran Tan Thanh1, Vo Minh Hien2, Gavin J D Smith3, Tran Nguyen Bich Chau1, Dang Minh Hoang1, Nguyen Van Vinh Chau2, Truong Huu Khanh4, Vo Cong Dong5, Phan Tu Qui4, Bach Van Cam4, Do Quang Ha1, Yi Guan3, J S Malik Peiris3, Nguyen Tran Chinh2, Tran Tinh Hien2 & Jeremy Farrar1

1 Oxford University Clinical Research Unit, 190 Ben Ham Tu, Ho Chi Minh City, Vietnam.
2 Hospital for Tropical Diseases, 190 Ben Ham Tu, Ho Chi Minh City, Vietnam.
3 State Key Laboratory of Emerging Infectious Diseases, Department of Microbiology, The University of Hong Kong, 21 Sassoon Road, Hong Kong SAR, China.
4 Pediatric Hospital Number One, 2 Su Van Hanh, Ho Chi Minh City, Vietnam.
5 Pediatric Hospital Number Two, 14 Ly Tu Trang, Ho Chi Minh City, Vietnam.

Correspondence should be addressed to Menno D de Jong dejongmd@gmail.com

鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスは、ヒトで重度の症状を引き起こすが、その病原性の基盤は明らかになっていない。in vitroおよび動物での研究からは、ウイルスの高い複製能と播種性が疾患の病因として重要であることが示されている。実験では、ウイルスが誘発するサイトカイン調節異常が重症度に関係することが示唆されている。これらの知見とヒトでの症状との関連を検討するために、H5N1感染者18例およびヒトインフルエンザウイルス・サブタイプの感染者8例に対するウイルス学的および免疫学的研究を行った。ヒトへのインフルエンザH5N1の感染では、咽頭での高いウイルス量と、直腸および血液中にウイルスRNAがしばしば見いだされることが特徴である。血液中のウイルスRNAは、H5N1による死亡例でのみ認められ、咽頭のウイルス量の多さと関連があった。H5N1の感染患者では、特に死亡例において、末梢血Tリンパ球数が低く、またケモカインとサイトカイン濃度が高くなり、これらは咽頭のウイルス量増大と相関していた。H5N1ウイルスの遺伝的解析からは、哺乳類への適応と病原性獲得に関連してウイルスのポリメラーゼ複合体の変異が認められた。今回得られた知見は、高いウイルス量と、その結果起こる激しい炎症反応が、インフルエンザH5N1の主要な病因であることを示している。臨床管理では、早期診断と有効な抗ウイルス剤の投与により、この激しいサイトカイン応答の予防に焦点を合わせるべきであろう。


[原文]
Fatal outcome of human influenza A (H5N1) is associated with high viral load and hypercytokinemia

Menno D de Jong1, Cameron P Simmons1, Tran Tan Thanh1, Vo Minh Hien2, Gavin J D Smith3, Tran Nguyen Bich Chau1, Dang Minh Hoang1, Nguyen Van Vinh Chau2, Truong Huu Khanh4, Vo Cong Dong5, Phan Tu Qui4, Bach Van Cam4, Do Quang Ha1, Yi Guan3, J S Malik Peiris3, Nguyen Tran Chinh2, Tran Tinh Hien2 & Jeremy Farrar1

1 Oxford University Clinical Research Unit, 190 Ben Ham Tu, Ho Chi Minh City, Vietnam.
2 Hospital for Tropical Diseases, 190 Ben Ham Tu, Ho Chi Minh City, Vietnam.
3 State Key Laboratory of Emerging Infectious Diseases, Department of Microbiology, The University of Hong Kong, 21 Sassoon Road, Hong Kong SAR, China.
4 Pediatric Hospital Number One, 2 Su Van Hanh, Ho Chi Minh City, Vietnam.
5 Pediatric Hospital Number Two, 14 Ly Tu Trang, Ho Chi Minh City, Vietnam.

Correspondence should be addressed to Menno D de Jong dejongmd@gmail.com

Avian influenza A (H5N1) viruses cause severe disease in humans1,2, but the basis for their virulence remains unclear. In vitro and animal studies indicate that high and disseminated viral replication is important for disease pathogenesis3,4,5. Laboratory experiments suggest that virus-induced cytokine dysregulation may contribute to disease severity6,7,8,9. To assess the relevance of these findings for human disease, we performed virological and immunological studies in 18 individuals with H5N1 and 8 individuals infected with human influenza virus subtypes. Influenza H5N1 infection in humans is characterized by high pharyngeal virus loads and frequent detection of viral RNA in rectum and blood. Viral RNA in blood was present only in fatal H5N1 cases and was associated with higher pharyngeal viral loads. We observed low peripheral blood T-lymphocyte counts and high chemokine and cytokine levels in H5N1-infected individuals, particularly in those who died, and these correlated with pharyngeal viral loads. Genetic characterization of H5N1 viruses revealed mutations in the viral polymerase complex associated with mammalian adaptation and virulence. Our observations indicate that high viral load, and the resulting intense inflammatory responses, are central to influenza H5N1 pathogenesis. The focus of clinical management should be on preventing this intense cytokine response, by early diagnosis and effective antiviral treatment.

2006年11月08日

低出生体重児に関わるタンパク質と遺伝子

20061108_a_lawn_mower.jpg男女の区別、ジェノタイプとフェノタイプはアナログなのかデジタルなのか?

特殊な例かもしれないが、その生物種が特殊な環境に陥った時、その環境に適応して種を存続させる為の“セーフティーネット”なのかもしれない。


現在の日本を象徴している??


性染色体がXXであるのに男性のフェノタイプ(表現型)を示す遺伝性疾患をご存知だろうか?受精卵を男にするか女にするかは、Y染色体の有る無しによって決まるわけではなく、性の決定因子(遺伝子)は他に存在することを、この疾患は教えてくれる。

性の決定因子として、1991年にY染色体遺伝子に存在するSRY遺伝子が発見されたのだが、SRY遺伝子は、進化の過程で、ヒトよりも前から、たまたまY染色体に乗っていただけだ。SRY遺伝子が同定される以前から、ヒトでも現象としてY染色体を持っていれば『=男』という表現型は知られていたので、『Y染色体=男』の概念が出来上がったのも無理はない。

Y染色体を持つ事と“精子”を作る能力は「=」ではないのだ。

理論的には、SRY遺伝子が他の染色体上に転座したXXでは、男になる。(だから、これだけを持ってしても、天皇家がY染色体を繋いで来た証明にはならない。だって、XXの男の天皇がいたかもしれないのだから。だから、Y染色体を紡いできたという理屈を捏ね回すのは、ちょっと寂しい。表現型としての“男”を主張すべきなのだ。あっ、この天皇はY染色体の精子を作れないから、子供は女しか産まれない?でも、次の世代もY染色体無しで男になったら??ん?何処かで途切れたら、溯るか・・・・・!やっぱりY染色体かぁ!一旦、継続の鎖から無くなったら、後からは入れないもんなぁ・・・。でも、SRY遺伝子が常染色体に転座して、暫く、XX男性天皇が続いた後、偶然XY型の女性との間でXY男子が生まれて、この男子で、常染色体にあったSRY遺伝子がY染色体に戻ったら・・・・・。有り得なくはないな・・・。まるでSFだ。おっと、これは余談。)


さて、この“受精卵を男にする因子”が、SRY遺伝子だけじゃない事が、2006年10月号のNature Genetics誌に報告された。その遺伝子は R-spondin遺伝子 だ。(R-spondin遺伝子 が Wnt-βカテニン系シグナルに関係していると言う事で、東大の中村祐輔教授がご自身のブログ「Let’s 個の医療」で取り上げている。私は R-spondin遺伝子 をこのブログで知った。)

性を決定する機構として、いままで考えられていたシナリオは、『SRYによって SOX9 という遺伝子が活性化される事により、始原生殖細胞が睾丸形成に向かう。活性化が起こらなければ、そのまま卵巣が形成される』というものだ。

マウスの解析で、SOX9遺伝子をXXマウスで強制的に発現させると睾丸形成が起こり、SOX9遺伝子を発現しないようにしたXYマウスでは卵巣の形成が起こることが確かめられていることから、この説は支持されている。

今回の Nature Genetics誌に報告された論文では、SRYやSOX9遺伝子の活性化すると言うだけの決定因子以外に、R-spondinとSOX9の“量的なバランス”によって、性決定の方向が決まるのではないかとの推測が成り立つとしたところが“ミソ”だ。(R-spondin が全く発現しなかった為にXXで表現型が“男”になったのだから。Y染色体のSRY遺伝子が無くても雄になるのだ。)

ゲノム→トランスクリプトーム→プロテオーム→フェノームとボトムアップの研究だけでは見えて来ないものが、フェノーム→プロテオーム→トランスクリプトーム→ゲノムとトップダウンの研究と並行して行われることで見えてくるものがあるという事を示しているからだ。でないと、ゲノム→トランスクリプトーム→プロテオームまでの個々の遺伝子の発現量や蛋白質への翻訳量など“量的なバランス”を見失しなう事になり、『全てのフェノタイプは“デジタル”に決まってしまうものだ』との誤解を招きかねない。それでなくても、遺伝子は只の“化学物質(デオキシリボ核酸)”で、4種類しかないんだから、『デジタルに決まる』って思い勝ちだよね、誰でも。


さて、今回、このような“性の決定機構”が、特別な環境での“緊急回避的”な種の DNA に内包された“適応機構”なのか?それとも、一般的な性の決定機構なのか?という点に興味を覚えたからだ。

その興味とは、特別な環境での、DNA に内包された“緊急回避的”な“適応機構”であれば、現在の“日本の状態=男性の女性化”をどう説明できるのかな?って、ふと思ったからだ。


地球上の生物には“自然淘汰”が係るのはご存知だと思う。この淘汰にはもう一つ、“性淘汰(sexual selection)”なのるものがある。

この“性淘汰(sexual selection)”は、雄が雌に(あるいは雌が雄に)パートナーとして選んでもらう為の資質を特化したもの(例えば、シカの角。これは生存の為には意味無い。雄鳥のカラフルな色彩。これは、敵に捕食され易く生存には不適なのに子孫を残すという点にのみ、選択される)の場合を指す事が多いが、以下に示す生存競争は、何と言えば良いのだろう?

遺伝子の多様性を増す為に、有性生殖を選んだにもかかわらず、雄と雌は、自分達の性の繁栄を願ってか?雄と雌の遺伝子が闘争状態にあるとする進化論上の学説があるのだ。

その学説を支持する発見が2002年に為されている。

胎盤でのタンパク質分子の産生に問題があるために低出生体重児が生まれるとした研究論文が2つの研究グループによって別々に発表されたのである。このような因果関係が発見されたことは、出生前検査の充実が図れる事にも繋がるのだが、この学説の信憑性を高める方向に働くかもしれない。

「この闘争の主戦場として胎盤が浮かび上がってきた」とバブラハム研究所(英国ケンブリッジ)で遺伝学を研究するMiguel Constanciaは言っている。

低出生体重児に関わるタンパク質と遺伝子

雌雄遺伝子の戦いの犠牲者か?

先進国の場合、臨月に生まれた赤ん坊の約2%が低体重児だ。低体重児は、生後数週間で死ぬ可能性が高く、身体や知的発達に問題を生じる可能性も高くなっている。また低出生体重児は、のちに冠状動脈疾患、II型糖尿病、脳卒中や呼吸器疾患にかかるリスクも高い。

妊娠中の喫煙、飲酒、栄養不良は、すべて低出生体重児の危険因子だが、健康で栄養状態の良好な母親からも数多くの低体重児が生まれている。

ケンブリッジ大学(英)のGordon Smithたちは、妊娠第12週までの妊娠関連血漿タンパク質(PAPP-A)という分子の量が少ないことと低出生体重児の出産との間に強い関連性があることを発見した。Smithたちは、4,000人の妊婦を対象とした研究で、このような結論に達した1。

PAPP-Aがあれば、胎盤はインスリン様成長因子(IGF)というホルモンを識別できるようになる。IGFは胎盤の成長に役立つ。ただしPAPP-Aが重要なのは妊娠最初期だけだ。「従って低体重の問題は、極めて早い時点で起こっているように思われる」とSmithは言う。

現在のところ、低出生体重児を識別する方法はなく、出生前検査は妊娠第12週以降に行われる。「その時点で、低体重になることが既に決まっているかもしれない」とSmithは言う。彼は、PAPP-A量を早期に測定することが低出生体重児出産リスクを調べる新たな検査法になるのではないか、と考えているのだ。

「これは、妊娠期間と比べて低体重の赤ん坊を識別するための優れたマーカーとなりうる」とコロンビア大学(米ニューヨーク)で病理生物学を研究するBenjamin Tyckoも考えている。

ところでConstanciaたちは、これとは別にマウスの出生時低体重に大きな影響を与える因子を同定した。IGF-IIというタンパク質をコードする遺伝子だ2。

この遺伝子は胎仔と胎盤で発現する。Constanciaの研究チームは、この胎盤で発現する遺伝子の一部に胎盤の成長と栄養素の適切な供給を図る機構があることを発見した。胎盤にIGF-IIのないマウスの仔の体重は正常値より平均で30%少なかった。

今回発見されたIGF-IIの機構は、臨床的に重要かもしれない。「IGF-II は、栄養素の需要と供給を調節する遺伝系で重要な役割を果たしている」とConstanciaは言う。彼の研究チームは、低出生体重児の母親の胎盤にIgf2や関連遺伝子が正常に発現されているかどうかを調べることを計画している。


雌雄の戦い

今回Igf2が同定されたことで、遺伝的コンフリクト説という考え方が新たな展開を見せている。ヒトは、それぞれの親の遺伝子の写しを1組ずつ受け継いでいる。その両方の遺伝子が発現するのが普通だが、特定の遺伝子だけは、父親から受け継いだのか、母親から受け継いだのかによって、発現したりしなかったりする。これを「インプリントされた遺伝子」という。

Igf2もインプリントされた遺伝子で、父親に由来している。この遺伝子によってIGF-IIが産生され、IGF-IIの産生量が多ければ、胎盤は大きく成長し、胎児により多くの栄養素が与えられる。その結果、高体重の健康な赤ん坊が生まれる。これこそ父親の遺伝子が次の世代に自らの遺伝子を残していく上で理想的な方法だ。

これに対して、赤ん坊の大きさを調節する自らのインプリントされた遺伝子を使って、このような流れに対抗することが母親にとっての利益となる。1回の出産に全精力を費やさないようにすれば、2回以上出産でき、次世代以降に自らの遺伝子をできるだけ多く残すことができるのだ。

低出生体重児が雌雄の戦いによって偶然生まれた犠牲者だとするには時期尚早だとTyckoは警告している。IGFとPAPP-Aの関連性については解明が進んでいないからだ。それでも「このような論点に取り組める段階にまで研究は進展した」と彼は言う。


参考文献

1. Smith, G. C. S. et al. Early pregnancy origins of low-birth weight. Nature 417, 916 (2002).

2. Constancia, M. et al. Placental-specific IGF-II is a major modulator of placental and fetal growth. Nature 417, 945-948 (2002).

絶対、不可能なんだけど、日本男児の全員に染色体検査をしてみたい。そして、男として生まれてきた人の中で、どれくらいの数が女性の男性化なのか・・・・。なんか、危険な香りが漂っちゃうけど、興味が湧いてきちゃうからしょうがない。

昨日の新聞で『男子が生まれる率が低下してきている・・・・』って読んだ気がする。環境の影響なのは解っているんだけど、具体的には何ナノか?ホルモン様化学物質か?それとも未知のウイルスか?紫外線か?温度か?精神的ストレスか?それとも、全てのバランスか???

なんにしても、“雄”が生まれづらい環境で、“雄の性質(暴力性)”は否定され、雄の性質は“野蛮”扱いされ・・・・・とにかく、雄にとって住みよい環境じゃ無くなっている事だけは確かだ。さらに、雄と雌の遺伝子レベルでの争いでも、雄は“負け組み”に追いやられ(低体重で生まれれば、女児より男児の方が弱い。)、数が減少してきちゃった。

そんな中で、緊急回避策として“雌の雄化”でしのいでいる・・・。だから、体力盛り盛り、精力絶倫の雄らしい雄が少なくなって、SEX も減って、出生数も減って・・・・。そして、XXの男からは、この例外の機序無くして女の子しか産まれないっと。


環境からの圧力で男性の女性化はもちろん有るだろう。それにプラスして女性の男性化の機構も無視できない。ヒトはデフォルトで女性なんだなぁとつくづく思い知らされる。
 
 
そういえば、“ファインディング・ニモ”でおなじみの“クマノミ”は環境にオスがいなくなると、何割かのメスがオスに変化して、子孫を残すと言う。ヒトも、こんな機構を使っているのかもね。だから、女性のようなジャニーズ系の男子が増えている、、、のかなぁ!

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