DHA がアルツハイマー発症予防
ベニスの商人と聞いて、この商人=高利貸しのユダヤ人シャイロックだと、思い浮かべる人は多い。でも、答えは『ブッブー』である。ベニスの商人は、シャイロックに金を借りたアントーニオだ。(あっ、そうだよなぁって感じでしょ?)
これと同様に『DHA がアルツハイマー発症予防あり』と聞くと、瞬間的に“サプリメントとしての DHA”だと頭に浮かぶ人が、ほとんどだと思う。
(“車は人が運転する”って思い込みがあるから、人はこの写真を可笑しく感じられる。何でおかしいの?って聞かれると、一瞬、答えにまごつく?)
そんな人の“思い込み”を指摘するかのような臨床試験を紹介しよう。(臨床試験は思い込みの指摘が目的じゃないけど、私は、それが目的♪)
Framingham Study:DHA高値は認知症リスク低下と関連提供:Medscape
ドコサヘキサエン酸高値の人は、認知症とアルツハイマー病の発症リスクが有意に低いことを示唆する新規研究結果
Caroline Cassels
Medscape Medical News【11月20日】ドコサヘキサエン酸(DHA)高値の人は、認知症とアルツハイマー病(AD)の発症リスクが有意に低いことを示唆する新規研究結果が報告された。
タフツ大学Jean Mayer USDA老化栄養研究センター(マサチューセッツ州ボストン)の研究者らは、DHAが最高レベルの人は、全ての原因の認知症の発症リスクが47%、ADの発症リスクが39%低いことを確認した。
「今回の研究では、DHA含量と魚の摂取に有意な相関が認められ、魚が食事によるDHAの重要な供給源であることが示された」と著者らは記している。
この研究は『Archives of Neurology』11月13日号に掲載されている。
Ernst Schaefer, MDらは、9年間の追跡調査によるプロスペクティブ(前向き)コホート研究を実施し、Framingham Heart Studyに参加していた899例の被験者を対象に、記入済みの食事質問票と血中DHA値を分析した。
神経心理学的な検査の結果、すべての試験参加者はベースライン時において認知症ではなかった。被験者はベースライン時以降、2年ごとにミニメンタルステート検査(MMSE)による認知機能検査を受けた。前回の検査成績からMMSEが3点以上減少した場合、該当する被験者を再び来院させ、神経学的および神経心理学的検査を実施した。
研究の長所
研究対象集団の36.5%は男性であり、平均年齢は76歳であった。血漿検体を採取し、脂肪酸のホスファチジルコリン(PC)の血漿含有量を測定した。また、患者488例の部分集団は、食事質問票に回答した。
試験期間中、899例中99例が認知症を発症し、これにはADの71例が含まれた。年齢、性別、血漿ホモシステイン値、アポリポ蛋白E4アレル、学歴について補正後、PC DHA値により被験者を4群に分けた。四分位数により最も高い群に含まれた被験者は、これより低い3群の被験者に比べて、全ての原因の認知症とADの発症リスクが有意に低かった、と著者らは報告した。
さらに、食事質問票に回答した参加者のうち、DHAが最も高い群では、DHAの1日摂取量が平均0.18gであり、魚を週に平均3回摂取していた、と著者らは報告している。
「本研究は、認知症およびアルツハイマー病の発現における血漿中PC DNA含量の予測値を評価した、初めてのプロスペクティブ(前向き)分析である。長所として、プロスペクティブ(前向き)デザインであること、長い追跡調査期間、標本サイズ、認知症と血漿中リン脂質脂肪酸含量の直接的関連の評価に加え、食事データを分析していることが挙げられる」と著者らは記している。
栄養補助食品にも保護効果あり?今後の研究では、確立した認知症患者において、DHA栄養補助食品の併用によりさらなる精神機能の悪化が予防可能かどうかを主眼に検討する必要がある、と研究者らは指摘している。
本研究は「ヒト血漿中DHAを直接測定し、アルツハイマー病のリスク低下との関連を示した、最初のエビデンスである」と付随する論説でラッシュ大学医療センター(イリノイ州シカゴ)のMartha C. Morris, ScDは述べている。
1980年代および1990年代の研究では、DHAが若年時の学習能力と記憶に重要であることが明らかになった、とMorris博士は述べている。しかし、老化した脳におけるω-3脂肪酸の重要性が検討されるようになったのは最近のことである。
高齢者が食事でDHAをより多く摂取すれば、老化した脳のDHA濃度が高くなることが研究から示されているが、ω-3脂肪酸の栄養補助食品が認知症を予防するかどうかを最終的に判断するには、今後さらに研究が必要である、とMorris博士は指摘している。
Arch Neurol. 2006;63:1545-1550, 1527-1528.Medscape Medical News 2006. (C) 2006 Medscape
※引用文中ほど「本研究は、認知症およびアルツハイマー病の発現における血漿中PC DNA含量の予測値を評価した、初めてのプロスペクティブ(前向き)分析である。」とあるが、血漿中PC DNA含量→血漿中PC DHA含量 と思われる。
結局、魚をたくさん食べていた人の方が、血漿中PC DHA含量が多く、アルツハイマーの発症率が低かったという結果から、DHA とアルツハイマーの因果関係を結論づけているのだが、もしかしたら、魚に含まれる他の成分の可能性もあるってことで、『栄養補助食品にも保護効果あり?』と言う事なのだろう。
このサプリメントで、結果が示せれば『DHA とアルツハイマーは因果関係あり』だと。
しかぁ~し、この試験では、“魚を食べる”を強制的にさせていたわけではない。自由意志による“魚の摂取”だ。とすると、当然、“好き嫌い”がある。
“魚を食べる事が好き”という“嗜好=遺伝子=脳の構造”そのものが“アルツハイマー耐性”だと言う事は言えないだろうか??(例えばアミロイドβが蓄積しづらい人は魚が好き・・・とか?)
サプリメントで試験を組む時は、自由摂取ではなく、ランダムに割り付けて欲しいものである。(でも、サプリメント代金は誰がだすんだろう?摂取する人が負担するとしたら、脱落しそうだよな!DHA サプリメントって高いもん。そして、結局、アルツハイマーに関心がある人だけが残る。これで得られるデータも、なんか偏ってそうだなぁ。。。。DHA サプリメントを無償で、これを売りたいメーカーが提供するにしても、きな臭くなるしなぁ・・・。)
それから、『若い世代でストレスが性生活にも影響』って調査結果だけど、、、
~性生活を中心としたライフスタイルの実態調査~先ごろ、20~40歳代各男性の性生活を中心としたライフスタイルの実態調査結果〔調査実施機関は電通サドラー・アンド・へネシー(株)〕が示され、“若者の性機能の低下”、“元気のない20歳代、30歳代”という実態が浮き彫りになった。
ストレスありは全体で85.3%今回の性生活を中心としたライフスタイルの実態調査は、現在、性的なパートナー(異性)がいる20歳代、30歳代、40歳代の首都圏在住の男性1,500人(各500人)を対象に、インターネットを利用して行われた。
質問の33項目は、「喫煙・飲酒習慣の有無」、「現在の心理的状況」、「ストレスの度合いや原因」などの一般的なライフスタイルと「現在の性生活への満足度」、「勃起不全(ED)低下に関する認識」などの性のライフスタイルから成る。
その結果、イライラする頻度が「ほとんどない」と回答していたのは全体でわずか17.5%、ストレスが「多少ある」、「非常にある」は85.3%で、ストレスの原因として「仕事/上司」が85.5%を占めていた。
一方、性のライフスタイルに関する項目については、性機能の低下を自覚していた人は全体で38.3%(30歳代37.8%、20歳代27.4%)、実際に低下し始めた年齢は平均33.6歳と回答していた。しかし、ED治療経験者は全体の1.1%にすぎず、受診未経験者で受診を希望していたのは15.1%(20歳代16.4%、30歳代14.8%、40歳代14.1%)であった。
日本性機能学会の定義に基づく「セックスレス」が認められたのは20歳代16.0%、30歳代28.4%、40歳代38.4%であった。
調査結果はED診療現場と類似同調査結果について、実地臨床医からの見解として浜松町第一クリニック(東京都)の竹越昭彦院長は「今回の調査結果は仕事のストレスが原因で軽いうつ状態になり、EDを来し、来院するケースの割合が高いという診療現場と非常に似ている」とコメントを寄せた。
また、性機能の低下を認識している人の割合が全体で38.3%であったにもかかわらず、EDを自覚していた人の割合は9.7%で、実際に治療を受けた人はわずか1.1%であったことに着目。いまだにEDをはじめとする性機能の低下や治療についての情報が普及していない状況を指摘し、同院長は「今後、これらの普及は、われわれ医師の課題であるとあらためて認識した」と述べた。
これも、そう。
事が起きると、何かに原因を求めたい人間の心理を巧みに利用している?っていうか、『原因はストレスですね』というと、ほとんどの人が納得するというもの。
現代人は“ストレス”と“アレルギー”と説明されれば、ほとんど納得してくれる。
現代の日本において、セックスが少なくなっている原因は“ストレスだ”っていうのは、間違いじゃないけど、考えられる原因全てを示しているのか?っていうと、そうじゃない。
それに、こういう結果と“ストレス”を断定的に結び付けると、『ストレスは人間にとって“悪い”ものだ』っていう間違った認識を広める事にもなる。ストレスがなければ、細胞の成長は期待できず、システムとしての人の機能も成熟しない。精神的ストレスがなければ、精神的な成長は為されないのにね。『じゃ、精神的ストレスが苦になって、病気になったり、自殺しちゃうのは、どう説明するんだよ?』って声が聞えてきそうだけど、ストレスの感受性って、個人差が大きい。
お次は『原因をなるべく単純化したい』『何故なら、知らない人に納得くさせるのに、理由は単純なほど効果的だから』という、良い例を示そう。
ANN INTERN MED に掲載されている『冠動脈疾患合併患者は拡張期血圧下げ過ぎに注意』って論文。(タイトルが内容を示しているので引用はしない)
いわゆる、血圧のJカーブ現象だ。『何がなんでも、血圧は低い方が良い』って論文も多い事を背景に、このJカーブ現象のデータを疑問視する人がいるのだ。
『何がなんでも、血圧は低い方が良い』は、動脈硬化にとってみれば当たり前だ。動脈硬化の原因としてメニカルストレスは神経・液性因子と原因を二分する原因の一つだからだ。でも、血圧はからだの隅々まで血液を送り届ける為には、大事な因子だ。二律背反なのだ。生きていく上で『酸素が絶対必要だけど、過酸化物を生成し悪影響をも及ぼす』のと同じようにね。このネタでブラック・ユーモアを作るとすれば、《血圧を出来るだけ下げたおかけで、動脈硬化の恐れから解放されました。今後一切動脈硬化の心配はありません。死んでますから。》ってところかな。
『血圧は低ければ低い程が良い』ではなく、メカニカルストレスが動脈硬化を起こす経路を断ち切れれば、血圧は高くても“気にしない”ことになるのにね。(良く、血圧をゴムホースの内圧に喩える人がいるけど、あれが、“誤解”の基。血管は生きているから、圧力というストレスが加わっても劣化しない事も可能だということに気づいて欲しい。ベニスの商人はアントーニオなのだ。)
■ベニスの商人はユダヤ人の高利貸シャイロック
■DHA は認知症に効く
■ストレスは悪者だ
■高血圧は悪者だ
なんか、どれも、良く似ているような気がする。
なんとなく形成されてしまって蔓延しているコンセンサス(都市伝説?)って、怖い。それを検証しようとする事を忘れてしまいそうになる上に、その伝説を“補強”しようと、臨床試験を組んじゃったりしちゃう。
BTJ ジャーナル創刊号での理研の林崎氏と東大菅野教授の対談や、今月23日付の英科学誌 Nature に発表された『遺伝子の数すら個人差がある』を見ればわかる通り、今まであった遺伝子の概念と実際の存在状態は、かなりかけ離れていて、今、それが徐々にベールを剥がされようとしていると言える。
だから“個の医療”なのだ。
人間一人一人は、外界からのストレスに対する反応が違うのは当然なのだ。HIV ですら、AIDS 発症に個人差があると、その23日付の Nature に記されている通り、多様性を持つ事が、進化の過程で種を存続させる“力”となっているのだから。
でも、これって不思議だ。人間の体は HIV を知らなかった筈なのに、ちゃんと対応する“体質”を用意している。なんだか、免疫のレパートリーの多様性を見ているようだ。免疫系も、まだ見ぬ敵に対する抗体を“無制限”に用意できる能力があるんだからね。
まるで、遺伝子再構成に働く RAG や体細胞変異まで積極的にやって多様性を得ている抗体産生細胞などを見ているようだ。
遺伝子が発現すれば、それはとりもなおさず表現型に現れる訳だけど、(tRNA や rRNA は別にして)転写された RNA がすべて蛋白質の設計図かというと、最近では、そうではない。古典的なセントラルドグマではそうだったけど、現在では non-cording RNA が生命現象に於いて多彩な機能を発揮している事が解ってきて、全てが蛋白質に翻訳されない事が解ってきたからだ。(実態は、昔からそうだったんだけど、昔はそれを知らなかったから。)
この、RNA が単独で生命現象に影響を与えているのって、なにも、ヒト細胞の DNA が転写されて出来た RNA だけの話じゃないだろう。
例えば、生体に侵入したウイルスは、免疫系に粉々にされ、飛びっ散った RNA は普遍的な酵素である RNase で分解される訳だ。この分解された断片が、なにかしらの機能を持った“形”に、偶然、なったとしてもおかしくはない。(当然、Dicer で切られる miRNA も含む)
だとしたら、感染症が、ヒトの色々な病気の引鉄を引くのが理解できる。脳に達すれば、精神機能にも影響を与えるだろう。セックスしなくなってもおかしくはないわけだ。
そして、地球上にある、今までは人の踏み込めなかった領域にまで、人は到達できるようになった。当然、そこには、人が存在しない形で微生物の生態系が作られていた筈だが、その中に人間が自ら足を踏み入れれば、人間の体内での遺伝子発現に影響を与え、今まで考えられなかった影響が出てくるのは、想像に難くない。(メタゲノム)
今年の夏に、複数のグループから発表された piwi 蛋白質結合 RNA(piRNA)が、精子の形成に関与しているって言うし(感染症と関係有るかどうかなんてわかんないけど)、蛋白質に翻訳されない RNA が凄い事になっているわけだ。(あっ、これはセックスしても“不妊”になる場合のネタかぁ!どっちにしても少子化に RNA が関わっている・・・と。)
産業や社会のインフラが日々撒き散らしている“化学物質”だって、影響が無い訳がない。
今『シェイクスピアの驚異の成功物語』を読んでいるせいで、そんな事を考えてしまうのだ。
その著者 Stephen Greenblatt 氏は、当時起こった事件や事故、行政や司法、文化などなど、細かい考察を重ね、シェイクスピア戯曲のテクニックを解きほぐしているのだが、【ベニスの商人】では、当時のイギリス人(ヨーロッパ人)のユダヤ人感を巧みに利用していると指摘している。(面白いだけじゃなく、印象強く、心に残る。話のプロット自体は、盗作?まがいなのに、シェイクスピアにかかると、まるで、別の印象だと、だれしもが言っているように。)
私には、そんな文学を考察出来る能力は無いから、せめて、医学関連の“都市伝説?”をこうして考察して楽しんでいるわけだ。